第255話 最大コンビネーションを叩き込みますっ!
氷山から目覚めた竜は、50人編成のパーティを全滅に追い込んだ強敵だ。
一定以上の攻撃を隙なく集中し、氷の鎧をはがさないと強烈な反撃と共に全回復してしまう。
そんな、凶悪なギミックを持つボス級モンスター。
「次に氷嵐と回復を使われたら私とツバメは死に戻りっぽいし、相手はほとんど動かない。全開のコンビネーションで一気にたたみ掛けましょう」
「分かりました」
攻撃に隙間ができれば、氷竜は反撃を入れてくる。
反撃への対応に時間を取られれば、強烈な吹雪からの回復が始まる。
必要なのは『攻撃の隙』を埋めるように『崩し』の取れるスキルを入れて、全てをつなげた形にすること。
流れを構成し、説明するレン。
「りょうかいですっ!」
「いきましょう」
駆け出すメイ。
落ちてきた氷槍をかわしたところから、三人のターンが始まる。
「【フルスイング】!」
初撃はメイの叩きつけ。
「【フレアストライク】!」
そこへ即座に炎砲弾を放り込む。
「【ヴェノム・エンチャント】【電光石火】」
切り抜けは速いが、どうしても『軽く』なる。
当然それは、敵に反撃の隙を与えることを意味する。
「【紫電】!」
予想通り反撃に入ろうとする氷竜を、ツバメの雷光がとどめた。
「高速【フレアアロー】!」
そこにすぐさま炸裂する炎の矢。
この隙に距離を詰めたメイは、一気に氷竜の懐へ。
「がおおおおお――っ!」
【雄たけび】で、再びその動きを止める。
「【加速】【リブースト】【四連剣舞】!」
その隙に背後を取ったツバメが、一気に四連撃を叩き込む。
「【フレアバースト】」
続く爆炎が猛烈な炎をあげ、わずかに氷竜の体勢を崩した。
「ここが一つ目の勝負所よっ!」
ツバメもレンも大技を使用したため、すぐに攻撃を続けられない。
氷竜は体勢を直し、氷弾の乱舞を放とうと額の宝石をか輝かせる。
「【装備変更】【バンビステップ】! からの……とっつげきー!」
しかし【鹿角】になったことで移動速度を上げたメイが、ギリギリのタイミングで【突撃】を叩き込み、再び氷竜を転がした。
ここが山場となる。
これまでの連撃で氷の鎧はある程度剥がし落とされているが、いまだ健在。
「【加速】【四連剣舞】!」
再度放つ四連の剣撃。
蓄積した毒性がさく裂し、氷竜が大きく体勢を崩す。
「――――【コンセントレイト】」
杖を【ワンドオブ・ダークシャーマン】に変えたレンは、魔力を集中し始める。
「…………」
ここでメイは、氷竜の動きをギリギリまで見計らう。
そして額の宝石が輝き、反撃の氷槍が頭上に集まり始めた瞬間。
「ここで必殺の……【ソードバッシュ】だああああ――っ!」
猛烈な衝撃波が直撃し、氷竜ごと氷槍が消し飛ばされる。
氷の張った地面を転がった氷竜は、起き上がりと同時にレンを狙った氷風を放つ。
「間に合って! 【ダークフレア】!」
メイがギリギリを見計らって放った【ソードバッシュ】が功を奏す。
放たれた【ダークフレア】は、氷風が吹き上がった瞬間に直撃。
氷竜は黒炎の爆発に吹き飛ばされて、氷壁に直撃した。
「気持ちいいわね、これ」
「見事な連携でした」
動きのほとんどない、大きな身体のモンスターゆえに可能となる最大コンビネーション。
全てが無駄なくつながり、思わずため息をもらすレン。
HP全開のボスを瀕死に追い込むほどの流れに、ツバメも息を飲む。
「それじゃ、最後はメイにお願いしてもいい?」
三人の連携は、本来氷の鎧を吹き飛ばすのに必要な連続ダメージを大きく超え、氷竜のHPゲージを9割ほど削り取っていた。
どうやら氷鎧が取れた後、防御力は大幅低下するようだ。
「おまかせくださいっ! 【バンビステップ】!」
敬礼一つで、メイが走り出す。
身体を起こした氷竜は氷の槍を落とし、氷弾を乱射するが当たらない。
メイは全ての攻撃を余裕でかわし、最後の一撃である【大氷嵐】も【王者のマント】でかき消した。
「【ラビットジャンプ】!」
大きな跳躍。
【蒼樹の白剣】を掲げ、そのまま全力で振り下ろす。
「ジャンピング【ソードバッシュ】だぁぁぁぁ――――ッ!!」
駆け抜けていく猛烈な衝撃波。
氷竜は、粒子になって消えていく。
「やっぱり最後はこれよね」
「安定です」
「やったー!」
攻略条件付きの高難易度クエストを、見事に乗り越えた三人はハイタッチ。
「ほ、本当にあの氷竜を倒したのか!」
「ありがとう! 君たちのおかげで助かったよ!」
洞窟を戻り、採掘員たちに喝采を受けたのだった。
◆
「……もう、いないだと?」
今回も馬による移動で氷の洞窟にやって来た、闇の血盟の面々。
すでに氷竜が倒されたということを採掘員NPCに聞かされて、戸惑う。
「倒されちゃったかー」
なーにゃはお気に入りのドール、アルカナに抱き着いたまま苦笑する。
「……大ボス級の強敵だと聞いていたのだがな」
到着の早さはかなりのものだった。
それにもかかわらず、50人のパーティが死に戻るほどのボスが先行の1パーティによって倒されていた。
「我ら以外に、トップと呼ばれるイベント参加者はいなかったはずだ」
「意外と、即死級スキル以外は強くないタイプだったのかもしれないですな」
たははーと笑うなーにゃ。
「…………」
「ま、そういうこともあるっしょ。次いこ、次っ」
なぜか無言になったシオールの肩を、ローチェがポンポンと叩く。
そんな中リズは、二度続けてボス級が目前で倒されていたことに眉をひそめるのだった。
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