第194話 アサシン教団との戦い
「正体、暴かせもらいますっ!」
ついに見つけた、花の香りを漂わせる偽ザーラ。
メイはその眼前に『解呪の宝珠』を突きつける。
輝きと共に放たれる魔法の光。
その強い輝きが晴れると、そこには粘土のような質感をした悪魔型モンスター。
偽ザーラが、その正体を現した。
「お、おのれぇぇぇぇ!」
長い白髪に無貌。
大きな口に生えた乱食いの牙が恐ろしい。
怒りと共に咆哮をあげた偽ザーラは、目前のメイに飛び掛かろうとして――。
「【アサシンピアス】」
戦闘が始まった瞬間、【隠密】中のツバメが姿を現す。
ツバメの存在に気づく前に直撃を喰らえば、その威力は最高。
偽ザーラはわずか一撃で倒れ、その姿を消した。
「なんてことだ! ザーラ姫が化物だったなんて!」
「我々は騙されていたのか! ネフェルティア姫が言っていたことは真実だったんだ!」
「ならば婚約者の男はもしや……アサシン教団か!!」
その言葉に、舞踏会場にいたアサシン教団の連中が逃走を開始する。
「あれが偽ザーラの婚約者。そして姉様に魔法をかけ、モンスターを城に連れ込んだアサシン教団の幹部です……っ」
ネフェルティアの言葉に、すぐにレンはその意図を理解する。
この時点ですでにクエストは完了。
ここからは『逃げ出すアサシン教団』の連中をどうするかという、新たな展開だ。
「メイ、ツバメ、逃げる教団幹部をアサシンたちの防衛を崩しながら討つのがミッションよ! どうせならやってやりましょう!」
「りょうかいですっ!」
「後顧の憂いは絶たせてもらいます」
駆け出すメイとツバメ。
このミッションは、まだまだ慌てふためいている貴族たちの間を縫って幹部を追えというもの。
当然、貴族たちは邪魔になるはずだが――。
「【バンビステップ】」
メイは数センチ単位の動きで貴族を避け、一気に距離を詰めにかかる。
大きな武器や魔法は使いにくい場所だが、メイには問題なし。
「【装備変更】」
頭を【狐耳】に替え、迫り来る曲刀使いのアサシンたちの前へ。
「【キャットパンチ】!」
青く燃える拳で、次々にアサシンたちを打倒。
足を止めるまでもない。
そんなメイに魔法を放とうとするアサシンの目前に、駆け込む影。
「【電光石火】」
的確な高速移動攻撃でツバメがフォローする。
「ここなら後衛も狙ってくるわよね【魔力剣】」
後方から二人を追うレンのもとに、駆け寄って来るアサシン。
これを見事な斬り返しで打倒する。
「……これ、基本的にここでは逃げられて、あとに続くタイプのクエストなんでしょうね」
その難易度の高さに、クリア想定ではないミッションであることを予想。
それでも問題なく突き進むメイたちに、思わず笑みがこぼれる。
「それなら私は、先回りで――――」
レンは舞踏会場の彫刻のような手すりに駆け寄ると、そのまま跳躍。
三階に当たる会場から飛び降りて【浮遊】で着地。
予想通り会場から飛び降りて来た幹部に向けて、杖を掲げる。
「【誘導弾】【フレアストライク】!」
「ぐああっ!」
着地際を狙った魔法の一撃が、幹部アサシンを吹き飛ばす。
見事足止めに成功。
本来ここで捕まえて戦闘に入らなければ、『逃走』という結末になるところ。
「さすがレンちゃん!」
「素晴らしい先回りです」
すぐに後を追って降りて来た二人も合流し、幹部との戦闘が始まった。
「【連続魔法】【ファイアボルト】!」
「【スライドステップ】」
レンの放つ魔法を、横にずれるような動きでかわすアサシン幹部。
「【電光石火】!」
続くツバメの攻撃もスライドでかわし、右手に剣を逆手持ち。
「【疾剣】」
「【加速】!」
早い攻撃を横への移動でかわす。
「【疾剣】」
「ッ!」
続く攻撃をバックステップでかわす。すると。
「【砲火】!」
「ッ!!」
追って来た炎が、ツバメを閃熱で足止めした。
「【疾剣】」
アサシン幹部は狙いを後列のレンへ。
初撃は見事回避。
すると幹部は再び、【疾剣】のモーションを取った。
「もう一回横の移動で――!」
「【投擲】」
「うそっ!?」
全く同じ動きで、わずかなためから放たれる短剣は、ステップ直後のレンに突き刺さる。
「【砲火】」
「きゃあっ!!」
全力の横っ飛び。
ダメージはもらったものの、直撃はどうにか回避した。
「同じ始動で、モーションも途中まで同じ。でも先読み回避を外したらダメージって……嫌な攻撃ねぇ」
迫るメイ。
アサシン幹部は、狙いを切り替える。
「【疾剣】」
その連撃は、やはりやっかいだ。
早い斬撃をかわしたメイに、再度の斬撃か投擲の二択を迫る。
「一瞬止まるのは、投擲ですっ!」
しかしわずかな動きの違いをメイは見逃さない。
飛んできた短剣を余裕をもって回避。
「【砲火】」
そしてすでに、この攻撃順は知っている。
「【装備変更】!」
スキルを発動すると、メイの手に古木製の棍棒が現れる。
そして迫り来る炎の砲弾を前に、わずかに足をあげると――。
「せーのっ! 【フルスイング】!」
【魔断の棍棒】による豪快な振り回しが、完璧に炎の砲弾を捉えた。
発射時よりも速度を増した炎球は、そのままアサシン幹部に直撃。
幹部はとんでもない勢いで、王宮の庭を転がっていく。
「いくわよツバメ、最後はよろしくね!」
「はい!」
「【フリーズストライク】!」
【魔剣の御柄】に冷気を込め、起き上がったばかりの幹部を斬り抜ける。
「【電光石火】!」
そこに駆け込んで来たのはツバメ。
クロスするような斬撃で、幹部のHPを残りわずかまで減らすと――。
「これで終わりです――――【投擲】」
振り返りざまに【ダインシュテル】を投じてとどめ。
「やったー! レンちゃんツバメちゃんかっこいいー!」
拳を突き上げ歓喜するメイ。
遅れて警備兵たちが、幹部アサシンを捕らえにやってきた。
◆
「ありがとうございました」
「たすかったわぁ」
見事偽ザーラの正体を暴き、モンスターを打倒。
そのままアサシン教団幹部も撃破したメイたちに、姉妹は嬉しそうに笑い合う。
「こちらの本を受け取ってください。普段私が使っている書室にあったもので、アサシンのスキルについて書かれているようです」
【サクリファイス】:自身のHPを消費してスキルや通常攻撃の威力を向上する。消費量は任意で選択可能。
「諸刃の剣って感じかしら。ツバメの攻撃が威力を上げるのはいい感じじゃない」
「私からもプレゼントさせてもらうわぁ」
そう言ってザーラが連れて来たのは、豪華な鞍をつけた【王家のラクダ】
「この笛があれば、好きな時に呼び出しできるわよぉ」
「本当にありがとうございました。アサシン教団は『もう一つの王の眠り』……かつて存在していたと言われる、封じられた王を探していたようです」
「たしか、悪い王様だったのよねぇ」
「ですがこれでまたルナイルに安寧の日々が戻ってくるでしょう。ありがとうございました」
「よかったです」
安堵の息をつくネフェルティアに、影が薄い仲間のツバメがほほ笑みかける。
「それじゃピラミッドに向かいましょうか。すでに情報は出尽くしてるし、本当に観光する感じだけど」
「いよいよピラミッドだあ!」
「楽しみですね」
クエストを攻略したメイたちは、王宮を後にする。
ラクダを手にした三人はこうして、ピラミッドを目指すことにしたのだった。
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