第122話 テンパる
「ああ...来ちゃった...」
尻込みしながらキョロキョロするゆうきは今、イベント会場の前に立っていた。
そう、今日はセカンドプロダクション初となる全体リアルライブイベントの開催日だ。
収容人数10,000人越えの大きな会場を借りてのライブ。ボクの中では元々セカプロは名前だけしか知らないと言ってもいいレベルだったのだが、事務所が出来上がった時から名前を知っている為にここまで大きくなったことに感慨深いものを感じる。
ただ当時の人気からもこれは必然であったとも取れる。けど一つ大きな誤算だったのが...
「まさか、こっち側で参加することになるなんてなぁ」
こう言うイベントはファンとして参加することしか考えていなかったから、未だに衝撃である。
会場を前に少し静止した後ゆうきはくるりと体を反転させた。
「よ、よし、帰ろう。まだ開場してないみたいだし...」
「まてい」
そう言ってゆうきは来た道を戻ろうとすると莉菜がゆうきの手を掴み止めてくる。
「どこにいくの?」
「ま、まだ開いて無いみたいなので軽くこの辺りをぶらつこうかなぁって」
緊張からかそう口走るゆうきを莉菜は笑いながら止める。
「私らはこっち側なんだから入りが早いのは当たり前だよ?あ、やばい待って、フッ」
そう言うと莉奈はさっきのゆうきが言ったことを思い出したのかまた笑い出した。
「あー笑い過ぎてお腹痛いやッ」
「そ、そんなに笑います?」
「いやぁごめんごめん、じゃあそろそろ行こうか」
莉奈は呼吸を整えてゆうきに手を差し出す。
「えっと...はい!」
だいぶ混乱から醒めたのかゆうきもしっかりと答えて莉奈の後に続く。
◇◇◇
正面などよりも若干簡素というか無骨な内観になっている通路をゆうきは莉奈の後に続いて歩く。
しばらくして目的の場所に着いたのかとある扉の前で足を止めてノックをする。
「どうぞー」
中から見知った声が聞こえることに胸を撫で下ろす。
その声を聞いて莉菜は大げさに扉を開ける。
「やっほー」
そう言って部屋の中にズイズイと入っていく莉菜。それに続くようにゆうきも入っていく。
「し、失礼しまーす...」
まるで入試の面接かのように緊張した様子を見せるゆうきに六条は軽く挨拶を掛ける。
「おはよう、調子はどうだ?」
そう言われたゆうきは今いる控室が目に与える情報量の多さに戸惑ってしまう。
「え、えーっと...失礼しました」
なんとゆうきはそう言って部屋の外に出て扉を閉めてしめる。
それの様子を見た六条、草薙は慌ててゆうきを呼び戻す。
「まてまてまて」
「ゆうき君?場所あってるよ?」
とりあえず控室にゆうきが入るように進めるも...
「ここアレですもん!絶対入っちゃダメなやつじゃないですかぁ!」
「いやいや、今回しっかりここを借りてるから大丈夫だよ?」
「扉に『関係者以外立ち入り禁止』って貼ってあるじゃ無いですかぁ!」
「今回ゆうきは関係者だぞ?」
テンパりまくるゆうきに優しく言う二人。
そのおかげか、少し冷静になったゆうきは簡単に納得した。
「あ、そっか」
この先これで大丈夫なのか?そんな一抹の不安を感じながらもイベントに心躍らせる皆なのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます