第79話 狙い撃つよ!

後にも数戦アペックをプレイしたが、優勝には至らなかった。しかし、それなりの戦績を出すことができたので上々だろう。


<ク ロ>『いやぁ~ゆいは弓の適正が凄まじいね!』


<シ ロ>『3本射れば2本当たっていましたからね』


<ゆ い>『そんな大したことじゃないですよ...300m当たらなかったんで』


【コメント】

 :あの命中率はやばい

 :Cか?

 :さすがにないだろ

 :すげー


『『ふつう狙わないよその距離』』


<ゆ い>『あ、えっと..ごめんなさいです』


<シ ロ>『別にゆいを責めていないわ。あなたが想像以上に規格外だったって話よ』


弓の適正射程距離は約200m。これを過ぎると命中率が著しく低下する為、基本撃たないのだ。因みに300mを狙った時のゆいは2本矢を放ち、1本外している。これまでのプレイングがまぐれ当たりではないと証明しているが、本人的には当たったうちには入らないようだ...


<ク ロ>『そうだ、ゆい。少し試したいことがあるから一回訓練場に言ってもいいかな?』


<ゆ い>『は、はい。大丈夫です』


訓練場はパーティー内のプレイヤー以外は現れない設定になっており、基本的にAIM

練習等に使用されるモードだ。


<ク ロ>『さて、ゆいにやってもらうことは簡単だよ』


<シ ロ>『これから私たちが隠れながら動くのでそこを狙撃してください』


<ゆ い>『それはいいんですけど...なんでですか?』


<ク ロ>『さっきの試合で私たちよりも敵を早く見つけてたでしょ?あれが少し気になってね』


このゲームでの索敵方法はいくつかある。索敵系のアビリティを使う・視認する・音で気が付く。大まかに分けてこの三つだ。他の大会に呼ばれることがあるシロとクロは他のプレイヤーよりそれらが優れていると言ってもいいだろう。ゆいはこの二人が気づかなかった敵を察知して攻撃している。一度や二度だったら偶然で片付くがそうではないと二人は確信していた。


<シ ロ>『ff解除します』


そして始まった少し変わった模擬戦。ものの数秒でゆいの画面から2人は消え去っていった。


<ク ロ>『ちゃんと動いているから安心してね』


<シ ロ>『果たして当てる事はできる?』


少し煽るようなセリフを吐く二人をよそにゆいは音にフォーカスした。


<ゆ い>『....左斜め上....壁二枚』


そうつぶやきながらゆいは弓を引き絞り、矢を放った。


<ク ロ>『マジかよ』


<シ ロ>『想像以上ですね』


本人はまた気づいていないが、ゆいは動体視力と音の認識が人より長けている。今回の索敵がいい例で、足音・響き方・方向から位置を割り出すこの技術は場数を多く踏んだ熟練者にしか扱えない技だ。しかも"大体この程度"でしか分からないものだが正確に敵の位置を把握出来ているゆいは一種の才能と呼んでいいだろう。


 :こわ

 :俺分からなかった

 :俺も

 :チート乙

 :これは...ヤッてますねぇwwww

 :通報通報


ゆいが放った矢はシロのアーマーを貫いていた。ただ走っていたのではなく、実戦と同じ動きをしていた彼女を撃ち抜いたのだ。


<ク ロ>『ありがとう、もう大丈夫だよ』


<シ ロ>『今度あなたが良ければ、大会に出てみないかしら?』


<ゆ い>『お誘いはうれしいんですけど...今回は遠慮しておきます』


<ク ロ>『あれら、振られちゃったね~』


<シ ロ>『うるさいですよクロ』


<ク ロ>『あははっごめんごめん。それと...さっきからチートだとか騒いでる人らがちらほら見えるけど...今ゆいは僕たちの横でプレイしてるからやっていればすぐにわかるよ』


<シ ロ>『なんならこのパソコンは事務所の物ですからね』


少し荒れ始めたコメント欄を見たのかクロ先輩とシロ先輩が釘を刺してくれた。

細かい気配りができてこんなにゲームが上手いなんて羨ましいなぁ~


そんなことを思っているといつしか終わりの時間になっていた。


<ク ロ>『さて、楽しい時間はあっという間で、今日の配信はこれでおしまい』


<シ ロ>『明日もコラボウィークは続くのよね?』


<ゆ い>『はい!明日はしゃちょーとボクで放送するから楽しみにしていてね!内容はマシュマロを食べていくつもりだから、みんないっぱい送ってね!』


<ク ロ>『それじゃあみんなおつかれさま。またね』


<シ ロ>『...お疲れ様』


<ゆ い>『ばいばい!』


------この放送は終了しました------


氷柱ゆい/Turara Yui 登録者数 162万人


シロ&クロ/Shiro & Kuro 登録者数 72万人



◇◇◇


コラボが無事に終わり、家に帰宅した二人。

普段ならまったりするのだが、今日の出来事が妙に引っかかっていた。


クロ:「...少し調べないとなんとも言えないけど...」


シロ:「そうね」


クロ:「もしかしたら...」


こうして二人はそれぞれのデスクに向かうのだった。

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