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村長様の家に着くと、傭兵たちは客間のソファーに座って談笑しながら僕たちの到着を待っていた。まるで春の日差しのような穏やかで和やかな雰囲気。ただ、僕たちの姿を見るなり会話をやめ、神妙な面持ちになって姿勢を正す。
さすが傭兵、クライアントを前にしている時と仲間内だけの時とで意識が切り替わるということか。
ちなみに傭兵は全部で三人。事前に聞いている話では、いずれも僕と比較的年齢が近いのに世間では少しは名が知れている強者らしい。
…………。
弱くて何も出来ない僕なんかとは大違いだ。僕なんかとは……。
「初めまして、勇者様。私は剣士のミリーと申します。以後、お見知りおきを」
深く頭を下げたのは剣士のミリーさん。年齢は十六歳。太陽のように輝く金髪をポニーテールにしていて、目はキリッと凛々しい。
二年前に開催された王国主催の武術大会においては、ベテランや達人が多数いる中で準々決勝にまで勝ち残ったという。今の僕と同じ年齢の時にそこまで達しているのだから、きっと剣術に関しては天賦の才能があるんだろうな。
僕がチラリと視線を向けて遠慮がちに会釈を返すと、彼女は花が咲いたような笑顔になる。
「アレス様っ、あたしはネネだ。よろしくなっ!」
部屋が振動するような声で挨拶をしたのは戦士のネネさん。年齢は二十二歳で、メンバーの中では最年長。よく日焼けした褐色の肌と隆々とした腕の筋肉で、重そうなプレートメイルを身につけている。
丸い瞳と犬のようなクセっ毛が特徴で、雰囲気から豪快そうな性格が充分に伝わってくる。
彼女は世界的に有名な傭兵団に所属していたことがあって、その時は部隊長を任せられたこともある戦いの達人らしい。
「私は魔術師のジフテルと申します。パーティの参謀を務めさせていただきます。アレス様、どうかご安心ください。全力でサポートし、お守りいたしますゆえ」
優雅で上品に頭を下げたのは、魔術師のジフテルさん。年齢は十八歳。宮廷魔術師の家系で、魔法に限らず幅広い知識があるとのこと。戦闘経験も豊富で、頼れる実質的リーダーといった感じか。
彼はサラサラとした灰色の髪に切れ長の目、色白の肌をしていて美形だ。それでいて穏やかで優しいのだから、きっと女性にはモテるだろうな。
「さあ、アレスよ。お前も挨拶をしなさい」
「あっ……は、はい……」
返事をすると、三人の視線が僕に集まった。
おのずと緊張して手に汗をかき、血液が濁流のように全身を駆け巡って顔や耳が熱くなってくる。心臓が大きく跳ねて痛い。頭の中はぐちゃぐちゃで、何を言えばいいか分からない。
「ア、アレスです。えと……あの……その……よ、よろしくお願いします……」
「ふふっ、アレス様は人見知りをするタイプのようですね。まぁ、出会ったばかりですから仕方ないのかもしれません」
ジフテルさんはクスッと笑い、ミリーさんとネネさんは僕に温かな目を向けた。
まるで本当のお兄さんやお姉さんが僕を見守ってくれているかのような感じ。なんだか心が柔らかな羽毛に包まれているみたいで温かい。
◆
その後、僕たちはお茶を飲みながら雑談をして過ごした。
三人とも冗談を交えながら僕に明るく優しく接してくれて、いつの間にかすっかり緊張は解けている。普通に言葉も出て来るようになっている。
そうだ、今度は僕の方から誰かに話しかけてみようかな?
●ミリー……→5へ
https://kakuyomu.jp/works/16816700429434671245/episodes/16816700429434980549
●ネネ……→7へ
https://kakuyomu.jp/works/16816700429434671245/episodes/16816700429435019693
●ジフテル……→12へ
https://kakuyomu.jp/works/16816700429434671245/episodes/16816700429435093469
●やっぱり話をしない……→2へ
https://kakuyomu.jp/works/16816700429434671245/episodes/16816700429434892498
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