第326話:ポロリ危険(笑)

 



「じゃあな。頑張れよ」

 ハチワレ猫に別れの挨拶をして、俺は黒たまご…ではなく、八咫烏の卵の名前を再び考える。

 このままだとマジでうっかり「黒たまご」と口にしていまいそうだ。


 発想の転換。

 黒い宝石って何かあったか?

 ブラックダイヤモンド、オニキス、ブラックスピネル、ヘマタイト。

 前に見たブラックスターサファイアは綺麗だったが名前には向いてないよな。


「スピネルとかかな」

 1番名前に向いていそうな宝石名を呟く。

<なんにゃ?>

 別れを告げたはずなのに、なぜか立ち去らないハチワレ猫が返事をする。

「は?何が?」

<名前呼ばれたにゃ>

 いや、何を言っている?

「呼んでないぞ」

<呼ばれたにゃ!今、スピネルって言ったにゃ!>

 お前の名前がスピネルだなどと、俺が知っているはずがないだろう?


「あぁ、これは駄目なパターンですね」

 レイが溜息を吐きながら俺を見る。

「餌付けをした時点で、決まったようなものだろう」

 ジルドにも呆れたように溜息を吐かれる。

 いや、だって、モフモフがお腹が空いて死にそうだと言っていれば、何かあげてしまうだろう?


「では、スピネル。どこかへ行こうとしていた、もしくは何かを探していたのだろう?」

 スピネルの気持ちを確認する。

 一縷いちるの望みを託して。

<美味しいご飯と安心して眠れる場所は探していたけど、ガルムとフェンリルの側以上に安心な場所は無いにゃ!>

 確かに!!正論!




 ちょっとスピネルの件は置いておいて、八咫烏の名前を考えよう。

 現実逃避では決して無い!

「八咫烏の卵の名前考え直しだな。黒い宝石って、何があったかな」

 八咫烏の卵を視線の高さに持ち上げる。

「オパールとか、楕円でつるりとしてますよね」

 黒い卵を見て思い付いた事を、ついレイは呟いただけなのだろう。が、卵が一瞬震えたような?


 レイの手に、八咫烏の卵を載せる。

「えっと、今、何か言った?」

 レイが怪訝そうに眉をしかめる。

「オパールとか、楕円でつるりとしていると……」

 あ、気付きましたね。

「…………魔力を吸われました」

 はい!レイのペット確定です!!


「大丈夫だ!基本八咫烏は良い烏らしい」

 呆然としているレイの手をギュッと両手で握りしめる。

 勿論八咫烏の卵を持っている手だ。

 暗黒騎士と共にいる八咫烏、格好良いぞ!

 疾走する銀狼の横を飛ぶ八咫烏、これも格好良いぞ!


「あ、孵化するまではシズカとユキが世話するそうだから、安心して良いぞ」

 シズカとユキがレイの足元へ行き、チョコンとお座りをしている。

 見上げる瞳はキラキラだ。

 これで不平不満を言えたら、俺はレイを尊敬する。

「僕が居ない間、八咫烏の卵オパールをお願いしますね」

 レイはしゃがみ込み、二匹の頭を撫でた。




 さて、俺は自分の問題へ戻ろう。

 ウィンドウを開いて、従魔を確認する。



『番犬 ガルム』

『アルミラージ(変異種) ヨミ』

『ドラゴネット テラ』

『フローズヴィトニル フェンリル(リル)』

『ミドガルズオルム ヨルムンガンド(ムンド)』

『白狐(変異種) ユキ』

『月兎(変異種) シズカ』

『ケット・シー スピネル』



 はい。予想通りですね。

 しかしどのタイミングだったのだろうか。

 ガルムみたいにこちらから口説いたわけでは無いので、テイムした状況がいまいち判らん。

 とにかく、押しかけ従魔がまた増えたな。

 モフモフだから別に良いけどね!




―――――――――――――――

オパールは、勿論ブラックオパールの事です。真っ黒ではないのですが、綺麗だし、良い物はむっちゃ高いです。

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