第2話 巨大ロボ捜索
荒野を抜け、今ロイ達の艦は砂塵を巻き上げながらサボテンすら生えていない砂漠を走っていた。
居間を兼ねた操縦室では、ロイが双眼鏡越しに窓の外を眺め、巨神がいないかを探し続けている。
こんなことを、かれこれ二時間近くも続けているが、巨神の影はどこにも見当たらない。
「見渡す限り砂、砂、砂、巨神なんてどこにもいねっつの!」
「文句を言うな!」
不満に口を尖らせながらロイが窓を叩くと、背後からカイが槍の柄で頭を強めに叩いてきた。
「痛っつ、何すんだよ……って、カイ、何でお前そんな格好しているんだ?」
イスに座ったまま仰け反ると、そこには錆び臭い部屋に佇む鎧の騎士、もとい完全武装したカイが不機嫌そうに立っていた。
鼻から上を隠したヘルム越しでも感情が分かるのは長年組んできたロイとリアならではの芸当である。
「何でだと? 私は貴様が『巨神探しの天才である俺様なら五分で見つけてやるさ』と言うから、こうやっていつでも出られるよう準備をだな……そもそも、何故私達がこんな事をしているか、まさか忘れたわけじゃないだろうな?」
カイの迫力が倍化し、ロイは顔を強張らせる。
「いや、確かに前の仕事で報酬は受け取らなかったけど、ホラ、解体した巨神のパーツは手に入ったし……」
「そうだな、巨神を解体してそのパーツを売れば金は入る、だから、私達はこうやって巨神を探し回っているわけだが……」言いながらロイを槍の柄でド突き続ける。
「そもそもお前がそれとは別に報酬を受け取っていればわざわざ電気を使って、わざわざ砂漠を走って、わざわざ双眼鏡を覗く必要も無かったんだぞ!」
冷や汗を流すロイを、カイとリアが交互に罵る。
「この甲斐性無し」「スケベエ」
「経済観念ゼロ」「ヒモ」
「少しは計画性というものを持て」「少しは妹萌えというものを持て」
「「ドサクサに紛れて何言ってんだ?」」
ロイの妹リアは、ツッコむ兄とカイの視線を無視して、艦の操縦をしながら計器を指でつっついた。
「でも、今はまだ太陽電池で溜めた電気で走っているけど、これが無くなったらいよいよガソリンエンジンに交代だよ? ロイの空けた穴を埋めるために燃料費かけてちゃ意味ないんじゃないの~?」
リアの言うことはもっともである。ロイ達の艦は電気とガソリンで動くハイブリットエンジンを搭載しているため、電気があるうちは良いが、無くなった後は燃料を使うしK無い、ちなみに、巨神を撃退できるだけの迎撃設備を持たない小さな油田は全て巨神に破壊されているため、液体燃料は結構な値がするのだ。
「しょうがねえ、走るのはやめて、ここで巨神が通るの待つか、カイ、そういうわけだから戦闘はまだ先だ、その暑苦しいプロテクター脱げ」
「やれやれ、ダメなリーダーを持つと苦労する」
しょうがないとばかりにカイがヘルムを脱ぐと美しい青髪が流れ出し、背中まで伸びた。
ガントレットと、胸部を覆っていたプロテクターをはずすと、今まで窮屈そうにしていた胸がノースリーブのワイシャツの上からでもその存在をアピールしていた。
金属制のブーツを脱ごうとしゃがみ、そこまではいいかと立ち上がる動作に合わせて揺れる胸部を、ロイの眼球はまばたきせずに見ていた。
視線に気付いたカイに槍で叩き飛ばされたのは彼女が立ち上がったコンマ二秒後であった。
「ガフッ!」
操縦室のタイプライターが動き出したのは、イスから転げ落ちたロイが頭を床に叩きつけたのと同時だった。
頭を抱えて悶絶するリーダーを尻目に女衆はタイプライターから吐き出される紙に目を凝らした。
「どうやら、金の心配はしなくていいようだな」
カイが安堵するとリアは操縦席に飛び乗り、嬉々としてアクセルを踏み込んだ。
「ど……どうしたんだ一体?」
いつのまにか回復していたロイの問いに、カイが溜息を漏らしながら答える。
「仕事の依頼だ、巨神が迫っているが多くの家のキャタピラが動かないらしい、これでお前のせいで空いた家計の穴を埋められるな」
「せいぜい頑張ってね、お兄ちゃん」
戦友と妹に責め立てられ、針のムシロ状態のロイは力無く返事をするしかなかったが、その瞳の奥には巨神との戦いに燃える炎が既に宿っていた。
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