第6話 女神様、初めて活躍
前回のあらすじ
湖の村に来たレイ、フラウ(女神さま)、エミリア
そこで湖の調査と異変の解決を依頼されるが、湖を戻すには浄化が必要だという
我らが女神さまがその浄化が出来るという事だが……?
「それじゃあ浄化始めますね、レイくん、見ててくださいねー♪」
湖の傍まで来た女神さまは、皆に見守られる中、こちらに背を向けて手を虚空にかざす。
「――――さぁ、世界よ――――」
「――――さぁ、自然よ――――」
「――――今、元の姿に――――」
そこまで詠唱して、女神さまが手を叩く、すると――――
「うわっ!凄い光……!」
湖一面が光り輝いた、あまりの眩しさに目を覆う
そして数分後、ようやく光が止んだことを確認してから目を開く。
「……………おおお!」
さっきまで淀んでいた湖が底が見えるほど綺麗な水になっていた。
「凄い、凄いよ、めがみさ………いや、お姉ちゃん!」
感激して女神さまと言いそうになる。毎回間違えそうになってるけど今回は危なかった。
「レイくーん!見てましたかー♪」と言って女神さまが抱き着いてきた。
正面から抱き着かれるとおっぱ……いや胸が顔に…!17歳少年には本当にヤバいから!
「レイくん……褒めて?」
「うんうん、凄いよ!お姉ちゃん!」
本当に凄かった。今まで全然女神らしくなかったのに、初めて女神っぽいことした!
「じゃあレイくん……頭撫でてくれる……?」
人前でハグされて胸に顔が押し潰されてただけでも恥ずかしいのに、この上頭も撫でるのか…。
「う、うん……フラウお姉ちゃん、ありがとう…」
そう言いつつ、女神さまの頭を撫でる…ベルフラウ様の信者に見られたら殺されそうだ。
自分の顔も相当真っ赤になってると思う。
お姉ちゃん…か。自分には兄弟は居なかったから、嫌では無かった。
「えへへ……ぎゅうううううううう♪」
正直、滅茶苦茶柔らかいしいい匂いもするんだけど…周りの目線が怖い。
というかこの人流石にベタベタし過ぎではないだろうか?
ひとしきり撫でたり抱き着かれたりしたその後―――
「なあ、その二人とも、そろそろその辺で……」
湖が綺麗になって村人さん達も凄く喜んでたみたいだけど、数分経ってからこちらが未だに抱き着いてるところを遠巻きに見られていたことには薄々気付いてはいた。
「あ、す、すいません…、アドレ―さん!」
今になってまた恥ずかしさが込み上げてきて女神さまの抱擁を振りほどく。
女神さまも流石に満足したのか、顔を赤らめて満足そうな表情をしていたと思ったら…。
「わ、私はなんて恥ずかしいことを……!」
顔を真っ赤にしたまま隅っこで縮こまっていた。穴があったら入りたい的な。
「フラウの姉ちゃんに村のみんなでお礼を言うつもりだったんだが――」
アドレ―さんは、女神さまの方に目をやる。女神さまが縮こまってぷるぷる震えていた。
「………っ」
(……あれ?女神様、今何か話してたような…?)
気のせいだろうか、誰も居ないのに姉さんの口が動いてたように見えた。
「あれは言っても上の空だろうなぁ…代わりに坊主に言っておこう、ありがとな!」
「おお、ありがとうな、いやはや、すごい聖女さまじゃのう!」
「姉弟仲も凄く良いんだねぇ!ありがとうね」
「これでまた湖魚も元気になるのぉ、助かったぞい」
「さっそく漁に出かけようかな、完全に駄目になった魚は駆除せんといかんが」
「二人とも、ちょっとシスコンブラコン拗らせすぎてませんか?」
村の人々からお礼の言葉が沢山送られる。
ちなみに一番最後のはジト目のエミリアの言葉だ。そんな顔で言わないで…。
「それにしてもベルフラウさんの浄化は凄いですね」
「そうなの?」
「はい、この規模の湖を一度に浄化しようとすると数時間掛かります。
それをこんな僅かな時間で完璧に行うなんて、人間業とは思えませんよ」
「そ、そんなに凄いんだ…?」
ベルフラウ様ってあんな感じだけどやっぱり神様なんだなぁ。
「アドレ―さん、一応湖の調査をまだ行いたいので、一旦皆さんに帰ってもらえますか」
「分かった、どのみち直ぐに元の仕事に戻れるとは思っていなかったからな」
アドレ―さんはここの村長の仕事も行っており、村人からの信頼は厚かった。
そのため意見する人は居ない。アドレ―さんが解散と言えばみんな家に戻っていった。
◆
エミリアはまた魔法陣を描いている。
「浄化したとはいえ、おそらく元凶となる部分との繋がりは絶たれてませんからね」
そして数分後、またエミリアの魔法が発動する。
「魔力強化
そういえば索敵の魔法も使えると言っていた。
じっとエミリアの魔法が終わるのを見守っていると、女神さまが戻ってきた。
「落ち着きました?」
「あ、はい………ちょっとお姉ちゃんになるのが楽しすぎて、自分の本職忘れてました…」
大分思い込みの強い人だった。
さっきは凄い女神さまだと思ったんだけど、こう見ると普通に天然な人だ。
……さっきのは何だったんだろう。
僕には見えない誰かと会話してたように思えたけど、
別にスマホとかあるわけでもないし、もしかしたら他の神様と交信してたりするのかな?
「アドレ―さん、ちょっと買い物をしたいのですが…服が欲しくて」
「服?姉さんのその服はダメなの?」
「これはちょっと色々不都合があってね、一刻も早く脱ぎたいの…」
そう言って姉さんは頭を押さえる。……体調が悪いのかな?
「おお、フラウの聖女さん、浄化本当に助かったぞ
分かった、村の道具屋に行けば服も売ってるから付いてきてくれ」
もう女神さま、すっかり聖女扱いだな…。
それから30分程してアドレ―さんが戻ってきた。
「………索敵終了です。はぁ……しんど…」
エミリアの魔法が終わったようだった。
少し疲労していたようで時間も掛かってしまったようだ。
「お疲れ様…大丈夫?随分疲れてるけど…」
「普通に索敵するならここまで疲れはしないんですけどね。
湖全域となると長時間魔法を維持の必要で
見た目地味だけど結構大変な魔法なんだね。
「まぁそれは良いとして―――」
エミリアの話はこうだ。
浄化によって殆どのスライムは消滅しており水質も元に戻っている。
ただし元凶と思われる繋がりは絶たれておらず、放置してしまうと底の方にまたスライムの群れが出現する可能性があり、元に戻ってしまうという話だった。
「つまり、近いうちに元凶を叩く必要があると?」
「はい、まぁ1週間くらいなら影響はないでしょうが、それ以降は責任は持てません」
せっかく女神さまに浄化してもらったのにまた汚されるのは僕も嫌だ。
「あまり力にはなれませんが、僕も協力します。場所が分かるなら一緒に行きましょう」
「助かる。とはいえ、今から行くには遅い。
俺も村の仕事はあるし、次に大元に行くのは数日後になるな」
流石に疲労が溜まっていたエミリアは村の宿舎まで案内してもらい、休むことにした。
女神さまは道具屋に行ったきりまだ帰ってこない。
アドレ―さんが言うには随分買い物に迷っていたので先に戻ってきたという話だ。
アドレ―さんは毎日朝と夕方頃に村と湖周辺の見回りをしているらしい。
封魔石というお守りが入り口にあるため、基本的に村にモンスターは入ってこないらしいが、たまに入り込むことがあるらしいのだ。
僕も見回りに付き合うことにした。
途中でスライムと戦闘になるかもしれないと、
アドレ―さんはいくつかの装備を貸し出してくれた。
皮の鎧やブーツなんだけど、中に鉄板でも入ってるのか動きにくくはっきり言って重い!
僕は夕方の見回りまで慣れるため、近くを走ったり、借りた剣を振ってみたりと色々やってるんだけどさっきまでとは勝手が違った。
ゲームだと何十回でも振り回せる剣だけど、自分が振ると数回振るだけで腕が疲れてくる。
もう一度アドレ―さんに会って、軽い剣に変えてもらってまたちょっと練習を続けた。
そして夕方の見回りの時間になった。
一応化して貰った装備である程度動けるようになったので実戦も大丈夫。
そう思って、出会ったスライムと戦ったのだが……
「てやぁー!」スカッ
「たぁー」スカッ
「くらえー」スカッ
全然攻撃が当たらない!
何なら拾った石ころをぶん投げた方がまだ核に当てやすい。
今回は剣を使いたかったからマジックアローは使わなかったのだが剣は空振りばかりだった。
元々スライムが多かった地域のためスライム対策を施した皮の鎧や分厚い手袋やブーツを装着してるので多少引っ付かれても外側が変色したり溶けたりする程度で済んでいるのだが、あんまり当たらないものなので結局は石ころを投げてスライムを何体も倒していた。
どうも、皮の鎧がやたら重かったのはスライム対策で改良されていたかららしい。
スライムは時々飛びついて顔を狙ってくる。
下手すると失明の危険もあるから今の所剣よりは石ころで倒した方が安全に思える。
せっかく異世界に来たのに、そこまで異世界っぽいこと出来てないなぁ…。
女神さまから何か凄いパワーとか貰えてたらもしかしたらと思うんだけど、これが現実か……。
それにしても……
「ふんっ!」
アドレ―さんは一閃すると二体のスライムの核が横に真っ二つになり消滅していく。
剣技は自分とは別物だった。討伐数に関しても僕の数倍倒している。
「坊主!そっちは終わったか?」
「はい……凄いですね
僕の使ってる剣より大きくて重そうなのに、一度に二体も倒すなんて」
「ははは、年期が違うからな。坊主は剣は酷いが、まだ若いから仕方ない」
酷い剣は中々に辛辣だが実際とんでもなく酷かったから仕方ない。
「もし坊主が剣を習う気があるなら、俺が色々教えてやるぞ?」
それは有り難い、剣が使えたら多少マシにもなりそうだ。
「お、お願いします」と喰い気味に言うと、「おう…勢いはあるな!」と褒めてくれた。
流石にその日は疲労困憊だったので、僕もエミリアと同じ宿舎に泊まることになった。
◆
―――その日の夜
考え事を少ししていると、
コンコン、と僕の部屋をノックする音が聞こえた。
「はい?」
「私です、お姉ちゃんです」
お姉ちゃんは結局継続するのか…
「はいはい、どうしたんですか、フラウ…おねえさん…?」
ドアを開けてみると、女神さまの衣装が変わっていた。
「ど、どうですか…?今日ここで買い物してみたんですが…」
普段の正装とは違い、僕の旅人の服に近いか。
ただ着色が違い上は白でオーバーサイズ、下は緑の少し長めのスカートを穿いている。
スカートの下の方はヒラヒラはしていないが、若干透けており時々生足っぽいのが見えたりする。
でもえっちさはあまり感じず、女神さまの清楚さを感じる衣装だった。
「あ、あの…何も言われないと不安なんですけど…」
「いえ、凄く似合ってます…」
今日はずっと女神さまと一緒に居たけど、この衣装も凄く似合っている。
「良かった…」
はにかんだ笑顔がとても可愛かった。
「それでですね!おそろいのパジャマも貰ったんです!」
「え?」
「二人で仲良し姉弟って感じで良いですよね!だから今夜一緒に寝まし――」
言い終わる前に扉を閉じて鍵を掛けた。
「あ、あれ?何で閉めるんですか?鍵が閉まってる!?」
15歳の少年に一緒に寝ようとかこの人ヤバいと思う。僕も流石に耐えられない。
「おやすみなさい!」と言ってベッドのシーツを被る。
「レイくーん! 開けてーおねがいですから~」
女神さまを無視して、そのまま夜は更けていった―――
「……………」
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