END.平凡……とは?
「ふ~ん。平凡な物語っすね」
「そりゃあ、舞台や小説と違うから、平凡なのは当然でしょう」
「もう適当で良いじゃん」
図書室で3人の女学生が、一冊の本を囲んで読んでいる。
本のタイトルは『アイギスの歴史』と書かれている。国の歴史が載った本だ。
歴史書を見ながら、ノートにそれぞれ何か書き写している。
「はぁ、舞台で見たマルク様は、あんなにもカッコ良かったのにっす」
「いや、『パオラをかけて決闘だ!』って王に普通言わないでしょ。舞台の演出よ演出」
「夢がないっすねー」
「良いから適当に書いて終わらせようよ。1000年祭始まっちゃうよ」
1000年祭。アイギスという国が出来て丁度1000年目を祝うお祭りの事である。
時代は流れ、かつての革命から1000年以上が経ち、本来の歴史を知る者はもう誰も居ない。
今では、平凡な物語の一つでしかなくなってしまっている。
「教会の鐘がそろそろ鳴るし、もう行くよ」
「アイギスの歴史をノートに書いてくる宿題、どうするっすか?」
「そんなの後で良いよ。ほら行こう」
平凡な物語も、その時代を生き抜いた当事者たちにとっては、決して平凡な物ではない。
平凡な物語だねと言った彼女たちも、当人にとっては平凡とは言えないような人生が待っているのだろう。
END
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