第47話 side【ロキ】→【ミカ】
「では──全力で行きますッ! 『
「「「な?!」」」
「へ?」
サラさんからの回復魔法と援護魔法を受けた全員が驚く。
俺も予想外のバフの重ねがけに変な声が出た。
詳細はわからないが、『身体強化』『瞬発力強化』『速度強化』『継続回復』『状態異常耐性』──などのバフを一気にかけてくれたみたいだ。
しかも効果が高い。
そういえば──サラさんは念願の『聖女』に転職したと言っていたな……。
圧倒的なバフ力は『聖帝』がずば抜けていたが、ここまでの量の重ねがけはゲームでも見た事がない。
上級と呼ばれる魔法は複数属性を扱うから理論上は可能だが──それでもここまでの重ねがけは難しい。
なので経験、知識、技術、計算力が必要になってくる。
つまり──この重ねがけは“
これはサラさんが積み上げた努力の結果だろう。
現段階の俺には真似できないな……。
さて──
ミカもいきなり回復とバフを受けて驚いている。
声をかけておかなければ──
「ミカ、お前は1人じゃないッ! 皆で協力して切り抜けるッ! そいつはお前に任せたッ! 俺達は他のを倒すッ!」
「──うんッ!」
これでミカは目の前のオークに集中にしてくれるはずだ。
「これだけバフがあれば問題ないのでサラさんも攻撃に参加して下さいッ! 回復やバフが必要な時は正気に戻しますッ! それでは──ミカに近寄らせないように各個撃破でお願いしますッ! フォローは任せて下さいッ!」
「「「了解ッ!」」」
エリザベス、カオルさん、サラさんはミカに襲いかかるモンスターを次々と屠っていく。
モンスターのほとんどがゴブリンだから問題ない。
俺も5本の【風蛇】でフォローしていく。
「頑張れ〜★ 血の雨を降らせろ〜☆」
所々でヒメの気の抜けた応援が聞こえてくるのが少し鬱陶しい。
まぁ、戦えないので仕方ないが……。
そして、バフが切れそうになるとサラさんを正気に戻す為に“快楽紐”を使うのだが──
「あぁん♡ んあッ、も、もっとぉん♡」
と正気に戻る度にエロい声が聞こえてくる。
緊張感の欠片もない戦闘だ……。
まぁ、これぐらいじゃ俺も興奮はしないけどな。
『哀れな……もう不能になったのか……』
不能言うなッ!!!!
あと、哀れむなッ!!!!
いつもが激しいから、これぐらいは耐えられるようになったんだよッ!
しかし、ぞろぞろとモンスターが近付いてくるな……というか多過ぎるだろ……。
確かにここまで頻繁にエンカウントすると、行商人は近付けないだろうな……。
ちゃんと冒険者や兵士が対応しているの疑問に思うんだが?
いや、富裕層には肉は出回っているはずだ。
冒険者ギルドにはある程度、肉が納品されているのを見た事があるから一応討伐はしているのか?
それでも、食糧不足なのは狩る側の人数が少ないからか?
やはり、十分な肉が集まったら、それを使った料理を孤児院で売り出す方向は変わらないな。
この調子で狩り続けて資金を増やそう。
ミカをチラッと見るが、まだ決着はついていない。
実力をそのまま出せていればワンパンでも仕留められるはずなのだが、力が入りすぎているのか体が硬く、スキルも武技も上手く発動していない為、オークにあまり攻撃が通用していない。
モンスターはなんとかなりそうだし、ミカをサポートする方が無難かな?
そうと決まれば──
まずは体の強張りを取る必要があるな!
◆ side【ミカ】
実力で孤児院の中から選ばれたのに、足を引っ張って帰る事のはどうしても嫌だった。
オークがいる事は予めわかっていた。
だから覚悟を決めていた……戦えると証明したかった。
もう、心配をかけたくなかった。
なにより──
いつも私の訓練に付き合ってくれたロキに幻滅されたくなかった。
狩りを継続する為には目の前のオークに勝たなければならない。
いえ、乗り越えなければならない。
でも──
いつも通りに戦えない。
オークを見ているとあの時の記憶が蘇り、恐怖心と焦る気持ちが膨れ上がる。
そのせいで、スキルの発動タイミングは遅れるし、体が思い通りに動かない。
オークはニヤニヤ笑いながら襲いかかってくる。
このオークは私の仇じゃない。仇は院長が倒した。
でも、悔しい──
オークは私の人生をめちゃくちゃにしたモンスターだ。
きっと放置すれば私の村の惨状がまた起こるかもしれない。
私じゃ──乗り越えるのは無理なのかな?
諦めるしかないのか、そう思った時──
私の傷は治っていき、力が溢れてきた。
一瞬何が起こったのかわからなかったけど、こんな事が出来る人は1人しかいない。
サラさんを見ると──ニコッと笑いながら微笑んでいた。
そして、周囲に新手のモンスターが現れると──
「ミカ、お前は1人じゃないッ! 皆で協力して切り抜けるッ! そいつはお前に任せたッ! 俺達は他のを倒すッ!」
ロキがそう言い、皆──私が戦闘に集中出来るように立ち回ってくれる。
私は1人じゃない。
そう思うと、胸が暖かくなった。
とても嬉しい──
そして、私は少しずつ調子を取り戻していく。
だけど、どうしてもオークの顔を見ると体が硬直してしまう。
トドメを刺すには至らない。
そんな私を見ていたロキは──
「力が入り過ぎてるぞ」
そう言う。
そんな事はわかっている。だけど、どうしても足がすくみ、体が強張る。
「でも──さっきより動けている。力を抜いてやるよ」
続く言葉に疑問符が浮かぶ。
気が付けばいつの間にかロキの紐が腕に巻かれていた。
そして、それに気を取られた私にオークが攻撃してきた。
不味い防御が間に合わない──やられる。
その時──
「ふぁ?! うぅん♡」
私は気持ち良さが襲ってきて脱力する。
それはマッサージの時と同じ気持ち良さだった。いつものように耐えれない気持ち良さじゃない。
優しく包み込むような感覚だった。
筋肉が柔らかくなったのか、さっきまでとは嘘のように体が動き──オークの攻撃は私に当たる事なく避ける事に成功する。
今も継続的に気持ち良さが伝わってきて、さっきまで感じていた疲労が取れていっている。
「また力が入ったら、こうやってフォローはしてやるから、全力で殴ってみろ」
私は頷く。
ロキ、いつも助けてくれて──
ありがとう。
次の一撃で決めるッ!!!!
「ハァァァァァッ!!!!」
オークの顔面目掛けて“正拳突き”を放つと、オークの顔面はひしゃげて、そのまま倒れ──沈黙した。
勝てた?
ボケッと目の前を見つめていると──
「お疲れさん」
ロキが肩を叩いて労りの言葉をかけてくれた。
「本当に勝てた、の?」
「あぁ、勝てたぞ。今までで最高のパンチだったな。俺にはあんな威力で撃つなよ?」
私が確かめるように聞くと、揶揄うようにロキは応える。
私1人だけなら絶対に倒せなかった。
皆が協力してくれたお陰でトラウマであるオークに勝てたんだ。
「……ありがとう」
「どういたしまして。まだ、オークはいるし──続けるか? やるなら邪魔はさせないぞ? 肉はあったらあっただけ良いからな」
ロキの提案は凄くありがたい。
効率良くやるなら私なんかいらないはずなのに、私の為に時間を割いてくれる。
そんなロキがとても愛おしい──
当然、答えは──
「やるッ!」
そう、言い切った。
ロキがいてくれるだけでも頑張る事が出来る──
そして、しばらくオークと戦闘をしたら──
私の強張りは取れて、熱く火照り──
呼吸は別の意味で荒く、息切れを起こし──
自分の声とは思えない声が出た。
そして、鼓動も早くなり──
ロキを見詰めると胸が締め付けられ──
私のあそこがロキを求めていた。
もう、オークを見たぐらいじゃ強張りは起きないし、震えもしない。
むしろロキにいつこの快感を与えられるか楽しみで恍惚するぐらいになっていた。
トラウマで起こっていた症状の動悸と胸の苦しさなどが、継続的な気持ち良さのせいで全て上書きされた気がした──
帰ったら、直接触ってもらおうかな?
ロキっていつも胸とか見てるし──触らせたら、お礼になるよね?
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