第6話 ギンナンを食べ過ぎて死にかけてみる1

 脳だけは鍛えられない……そんなことはわかっていたはずなのに。

 またやらかしたシルベスター・ゆきのです。


 でも、ギンナンが脳に致命的なダメージを与えるなんて予想できますか?

「彼女の死因はギンナンです」なんて医師に言われるのを想像できますか?

 と、逆ギレしつつ今回は始まります。


 私はギンナンが大好きです。

 もうものすごく大好きです。茶わん蒸しの具で一番好きです。たまに2個入っているとそれだけで幸せです。


 ある日、農協直営の販売所で大量のギンナンが袋詰めされて数百円で売られているのに出会いました。

 やった!

 その日の私はギンナン祭です。

 一見食べづらそうなギンナンですが、殻ごと紙封筒に放り込み、レンジでちょこっとチンすれば、殻も綺麗に割れてほこほこの蒸しギンナンが作れます。  


 ↑紙の封筒に必ず入れて下さいね。爆発しますから。


 家でいちばん大きい封筒を探し、袋の中身をざらざらと入れていく私。

 わくわくしながらレンジの前で踊る私。  ←……踊ったんですか……?

 家には私1人。お皿には湯気の上がるギンナン。これを独り占めできると思うともう嬉しくて嬉しくて夢中で食べていきます。

 食べても食べても減らないギンナン。まさに夢のギンナン祭です。


 そして……。


 家人が帰宅。  ←監視監督が甘いぞ家人!!


「ただいま!メリークリスマス!ゆきのの好きなケーキ買ってきてやったぞ!」

「それどころじゃない……私……死ぬかも……」

「は?」


 ケーキの箱を掲げて玄関で微笑む家人。

 その前に倒れ込む私。


 たぶん、世界で一番不幸なメリークリスマスでした。


 いや、ギンナンを食べ終わって3~40分たったらものすごく気分は悪いわめまいはするわ頭は痛いわで、私、「え、なにこれ」な状態になったんです。

 風邪っぽくもインフルっぽくもない。

 でも死にそうに調子が悪い。動けない。

 その日はギンナンしか食べていなかった私はもしかして……と思ってグーグル先生に聞きました。


『ギンナン 食中毒』


 はい。ばっちりありました。ギンナンは食べ過ぎてはいけないという項目。


 こういうときはネットで調べてやきもきするより専門職だと『日本食中毒センター(24時間365日無料稼働)』に電話をしてみます 。


「あの……ギンナンで食中毒になるというのを聞いて……ギンナンを食べてから悪心、頭痛、めまいがひどいので電話をしたのですが ……』

『はい。何個くらい食べました?』

「30個以上」

『はっ?』

「30個以上だと思うんですけど……数えきれません……」

『……確かにギンナンは食中毒を起こしますが、失礼ですが身長と体重を……』

「はい。○cm、○kgです」

『少々お待ちくださいね……その数でしたら念のため病院に行かれた方が……』

「解毒剤とかあります?」

『ないのと、その量ではおそらく様子見ですね』

「デッドラインは何個ですか……?」

『成人女性ですと……個人差がありますのではっきりとは言えないのですが、50個がほぼ致死量です』

「わかりました……ありがとうございます……」


  ※※※


「というわけなの……」

「バッカじゃないかおまえ」

「だっていろんな軍事マニュアル見たけどギンナン食べ過ぎると死ぬなんて書いてなかったもん」

「そんなに食べるバカいないからだよ!」

「バカって言うなバーカ!!」

「バカだからバカなんだろバカ!そこまで元気あるんなら病院行かなくても平気だろバカ!」

「わかったよ行かないよ!死んだら後悔しろよバカー!!」


 ↑え?……結局行かなかったんですか?病院??

 そして……軍事、マニュアル……???


 つづきます。

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