たのしいまちがいさがし

負け犬アベンジャー

第一問

みぎがわ

 物書きの端くれを目指すものとして、近年大ヒットを記録している『鬼滅』を無視するわけにもいかず、その人気の秘訣について自分なりに分析、考察してみました。


 結論から書きますと『鬼滅は女性向けなろう系だからヒットした』との結論となりました。


 なろう系と呼ぶ条件は『主人公にとって都合の良い世界』と言えます。


 細かく書きますと『申し訳程度の悲しい過去』『特に何もしてないのに超絶パワーアップ』『周囲がひたすら褒めたたえてくれる』『難しいことは描かない』と言ったところでしょうか。


 この話を友人知人にするとその度に全く違うとの否定のお言葉を頂くのですが、更に話を進めていくうち、とある誤解が根本にあることが多いです。


 それは『主人公は長男ではなく長女である』ということです。


 つまり竹筒咥え娘が主人公です。


 その上で各要所を書いていきたいと思います。


『申し訳程度の悲しい過去』はなろう系ですと死んで転生、元の世界に戻れない、追放されて裏切られて、と言ったところでしょう。


 それに当てはまるのは序盤、家族が殺され、自身も鬼になってしまったことが当てはまります。


 そして申し訳程度という部分も、本人は意識朦朧として正しく認識できておらず、さらに言えば読者側も、登場人物の家族とはいえそこまで思い入れがないためにさほど悲しくもないわけです。


 否定のお言葉は後程、その家族の名前を調べずに羅列できるようになってからお願いします。


 次が『特に何もしてないのに超絶パワーアップ』です。


 物語の序盤、中盤で長男に対する修行描写はありますが、長女は特に何かしている描写はなかったと思います。


 その上で鬼としての高い戦闘能力、血鬼術を駆使し、長男一団に引けを取らない戦力として活躍し続けます。


 また、吸血鬼ものとしてのセオリーとして、自身が吸血鬼になってしまったがために人を襲わなかければならないというものがありますが、この長女は寝てるだけでOKです。


 敵の鬼が吸血衝動に苦しむ中で「ぷい!」で済む辺りが最高になろう系だと思います。


 そして次が重要な『周囲がひたすら褒めたたえてくれる』です。


 意識朦朧として、真っ当な会話もできなければ自分であることもせず、箱に入れられ運ばれて、なのに肝心な所だけ覚醒して活躍し、褒められる。


 容姿が可愛いというのを省いてもなかなかなものだと思います。


 その長女を取り巻く四人のハーレムもまた、女性向けのなろうとしては理想的な配置だと思います。


 魂無き奴隷が如く付き従い、素直を通り越して自我がなく、血縁故にいやらしい目で見てこないのに絶対に裏切らない『長男』は、長女の修行不足を補うように努力を重ねてもいます。


 ワイルド系でおバカ系の俺様キャラの『伊』は、道化としての役割はもちろん、素顔がイケメンで体がマッチョというキャラのバリエーション増やしにも貢献できてます。


 ヘタレでうるさく、黙ると有能になる『黄髪』もまた、男性向けならば出てこないか真っ先の殺されてるようなキャラですが、女性受けは良いようで、ここら辺も女性向けなんだと思います。


 最後に隠し味の『毒柱』が、男性社会である作品に対して、腕力こそ男には敵わなかいけれどもそれ以外は勝っている理想の女性像として加わることで、女性向けとしてのアクセントが加えられてます。


 最後に『難しいことは描かない』も含まれてます。


 バトル中心の物語ではありますが技などの細かな動きやギミックが雑にはしょられていて、理論を追求することもありません。呼吸の技もエフェクトで飾ってはいますが、具体的にどこをどう動いているのか、わかりません。


 ただその代わりに各キャラクターの細かなプロフィールや豆知識を細かく用意しているのはなろう系だからではなく、女性向けとしての特色なのかもしれません。


 以上を持って、私は鬼滅を女性向けなろう系だと判断しました。


 感想としては、時代の流れなのでしょうか、天下の『少年ジャンプ』ですらなろう系、そして女性向けに傾倒して人気を得ているというのは、個人的に好きな少年漫画が駆逐されているということなんだと思います。


 ……なので、まぁ、そろそろ異世界転生な女性向けなろう小説を書かなければならないところに来てるのだと、追い詰められています。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る