第20話イヴvsルフ3


「ーーーゴフッッッ、カハッッッ」


(ーーーーま、まずい、今のもう一回食らったら終わりだ)


「ああ、無意識に体を捻って着弾点をずらしたのか、だけど………」


ルフは血反吐を吐きながら立ち上がるもフラフラだ、もう一発打ち込めば彼女に避ける術はないし、その一撃で決着だ、私はトドメの一撃である魔弾を出現させるが……。


「やめた」


「なんのつもり?」


構えを解き、魔弾を消す私、不可解な顔をするルフ。


「クロスレンジで白黒つけようか、接近戦には自信があるんでしょ?」


「なんでわざわざ自分が不利になる事を」


「別に大した意味はないよ、それとも、負けた時の言い訳として魔弾で仕留めた方が良い?」


「ーーーーッッッ上等!!」


私は笑いかけながら拳を構える、獣人は怪我の治癒力も高く、魔力を集中させれば治すこともできる、私は怪我が治りきるまで適当に待つ。


「絶対後悔させてやるッッッ!!!」


「受けて立つッッッ!!」


ルフが真正面から突っ込んでくる、同じタイミングで私も彼女に突っ込む。


(ーーー調子に乗りすぎよッッこのままクロスカウンターで!!)


『ーーーー反動加速砲リコイルアクセル


「ーーーーッッッッ??!!」


あっちの方が身体能力も動体視力も優っている、ただ真っ直ぐ突っ込んだ場合、イヴの拳は避けられ、クロスカウンターを決められていただろう、しかし、イヴが呟くと体がなんの予備動作もなく横に少しスライドする、驚愕に染まるルフの表情、そのまま上手くルフの拳を避け、逆にイヴの拳が顔に突き刺さる。


「ーーーーガッッッッッ??!!!」


(ば、馬鹿な、なんだ今の動きは……)


「ーーーッッッ??!!、なるほど、その脇腹から出した砲身から魔力を放出して動いたってわけね」


「あたり、これで機動力は並んだよ」


腑に落ちないルフはイヴを注意深く見ると脇腹から砲身が飛び出ていた、どうやらさっきの不可解な横移動はあの砲身で行ったらしい。


(武器の展開速度がさっきとは大違い、あのグローブ、武器の展開速度も高速化してくれるのか)


「あんまり調子に乗らないでよ、確かに一杯食わされたけど、貴女は私の爪を防ぐ手立てがない、その事実はどうしようもなく変え難い!!!」


「それはどうかな」


ルフは肉弾戦に持ち込む、確かに、彼女の爪を防ぐ有効な手が存在しないのであれば、クロスカウンターなどの大技は狙わずとも小技で手数を出せば勝てる、しかし……。


「ーーー死ねッッッッッッ!!!!」


「ーーーおっと」


「ーーーなッッッ??!!私の爪でも斬れない??!!!」


イヴは左グローブの手甲部分でルフの爪を受け止める、自分の爪に絶対の自信を持っていたルフは驚愕の声をあげる。


(そ、そんな馬鹿な)


「一杯なんてケチ臭いこと言わずにたらふくご馳走するよ」


「クソッッ絶対押し切ってーーー」


「さてここでクイズです」


「ーーーッッッ??」


イヴとルフの手はさながら鍔迫り合いのように噛み合い、火花を散らして硬直状態へと移行、そこでイヴは一言呟く。


「このグローブの左手は魔弾や魔法陣の砲身を作る機能を持っています、なら右手にはどんな機能があるでしょうか」


「…………」


(確かさっき、右手で魔弾を殴っーーーー)


「ーーーーー!!!」


安全装置解除セーフティーオフーーーーーー雷管魔針撃鉄プライカー!!!!』


左手でルフの爪を弾き飛ばし、ガラ空きのボディへ右ストレートを叩き込む、電解質の魔力を纏った拳が当たる寸前、ルフの腹に魔法陣が現れる、まるで銃弾を打ち出すための雷管のようだ、いや、事実そうなのだろう、魔法陣を通り抜け、ルフの腹にイヴの鉄拳が撃鉄のように叩き込まれる、その一撃を合図に魔法陣が炸裂する、そしてルフは銃弾のように吹っ飛び、壁へと叩きつけられた、見物人からすればルフが殴られた瞬間、彼女の姿がかき消え、何事かと思ったら、不意に響く轟音に耳を塞ぎながらそっちを見ると壁に張り付いているルフがいた、遅れながらその場の全員がイヴの勝利を理解する。





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