第36話 寝癖がさ

「お前どうした? 寝癖ヤバいぞ」


角のとがったデビルの少女が言った。


「お前の地毛程じゃねぇよ」


耳のとがったエルフの少女が言った。


港町の喫茶店に二人の姿はあった。


「辛辣ぅ。狂犬過ぎだろ、心優しいアドバイスに対して」


「ごめんなさい。流石に本当のことをに言いすぎたわ」


「気を付けろよ。真実は時として残酷なんだから」


「そうね。で、その残酷な地毛よりひどい私の髪型だけど」


「反省の色! 無色! 無色透明! 曇り泣き光の中!」


「まあいいじゃないの。私とあんたの仲じゃないの」


「親しき中にも礼儀は必要だぞ」


「そんなもんは犬に食わせましょう」


「犬はお前だ、狂犬め。で、そのヘアースタイルはいったいなにがあったんだ?」


「別に。気分転換よ」


「え? 故意でやったのか?」


「そうです」


「正気か? はっきり言ってその髪型、死ぬほどイケてないぞ」


「大切なのは見た目じゃなくて中身よ」


「いや、お前は中身もイケてないだろ。せめて見た目だけはよくしないと」


「それは一理ある。あーこんな髪型にするんじゃなかったぁー」


「後悔が早いな。まあ、とりあえずアタシの帽子でも被っとけ、みっともないから」


「どうも……って穴が空いとるやないかーい」


「当たり前だろ、角を持つデビル用なんだから。贅沢言うな」


「これ被ってる方がみっともないと思うのですが」


「う、うるせぇ」


二人は喫茶店をあとにした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る