第14話 一曲歌っていいか?

「突然だが、一曲歌っていいか?」


角のとがったデビルの少女が言った。


「店内で歌うなよ! あきらか迷惑だろ!」


耳のとがったエルフの少女が言った。


港町の喫茶店に二人の姿はあった。


「……なんかすげー久しぶりだわ。お前のやたら圧の強い突っ込み」


「久方ぶりじゃのう。デビの字」


「何キャラ? そういうの突然やるのやめや、びっくりするから」


「こんなことでびっくりしてたら、社会でやってけないわよ?」


「知るかよ! いーねよそんないきなり老人キャラになる奴!」


「ここにいるだろ!」


「だから圧が強いんだって。もっとマイルドにできないか?」


「いや、できない」


「諦めるの早いな。お前の方だ、社会でやってけないのは」


「マジか? じゃあ裏社会でやっていくわ」


「すごい発想の転換! いや、悪いことは言わないからやめておけ」


「そうね。裏社会程度じゃアタシを活かせないからね」


「なんだその一周回ってアホみたいな自信は? 自意識過剰にも程があるぞ」


「自信と過信は紙一重という言葉があってね」


「ねーよ! ニューセンテンスだよ! 勝手なこと言いすぎだろ」


「失礼、流石に度が過ぎたわ。謝罪しマスカット」


「最後! 最後で台無しだ! なんでマスカット?」


「あら? マスタードの方がよかったかしら?」


「どっちも却下だよ。いいから一曲歌わせてくれ」


「しょうがないわね。どうぞ」


「ありがとう。では……」


「ありふれた〜♪」


「お前が歌うのかよ! なんでやねん!」


二人は喫茶店をあとにした。

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