第48話 体液
「キヒヒ!! どうするんだい、お姫様。そこのバカ男を助けるために、ヤッちまうのかい? 股をおっ広げて、男のモノを咥え込んじまうのかい?」
「ぐぁああああ!?」
ラーズから苦悶の声が上がる。彼を救うには体を重ねるしかない? そんなの、そんなのーー
「ひ、姫様、自分のことは構わずとも、だ、大丈夫です」
「……ラーズ。安心してください。貴方を見捨てたりはしません」
「キッヒッヒ。じゃあやるんだね。ほら、早くヤりなよ。何してるんだい? 今すぐヤーーぷぎゃ!?」
フローナのキックがゼニーヌの顔面にめり込んだ。
「うるさい。少し黙ってなさい」
彼女は紫の髪をかき上げるとこちらに視線を向けた。
「リーナ、魔女の言葉に惑わされてどうするの」
「ですが正体を看破された後の告白です。信憑性はあるかと」
魔女は正体が発覚してない内は様々な嘘でこちらを翻弄してくるが、一度魔女だと発覚すれば己が行使した呪術については嘘をつかなくなる。それが悪魔との契約で決まっていることなのか、あるいは魔女達の壮大なブラフの一つなのかはハッキリとしていないが、少なくとも魔女にそういう特徴があることだけは分かっている。
「そうね。呪術に関することだから恐らくは本当のことを言っているんでしょう」
「でしたら……その……」
出来ればその先を口にしたくはない。でも自らの貞操と幼馴染みの命を天秤にかけて貞操を取る気にはなれなかった。
「だからよく考えなさい。こいつは最初体液と言ったのよ。性行為なんてする必要はないの。貴方の血を飲ませればそれで解決よ」
「え? ……あっ。そ、そうですね……」
ラーズの尋常ではない苦しみ方を見て思考力が奪われた状態で、ゼニーヌが性行為を前提として喋ったので、勝手に性行為でなければならないと思い込んでしまった。
私はナイフで指先を切るとそれを彼の口へと入れた。
「飲んでください」
男の舌が私の指先に触れるゾワリとした感覚。それに一瞬手を引っ込めそうになったが、すんでのところで何とか堪えた。
「どうですか?」
「あ、ありがとうございます。痛みが引いてきました」
ラーズの顔に血色が戻ったのを確認してホッと息を吐く。彼は傍に立つフローナを見てついさっきまで真っ白だった顔を真っ赤にした。
「……見ないでもらえるかしら?」
「あっ、ご、ごめん」
「くそがぁあああ!! 余計なこと言いやがって。こんなことならもっと徹底的にテメーの体を……ぐあぁああ!?」
ゼニーヌの顔面にフローナの拳が食い込んだ。
「今からいくつか質問するわ。答える答えないは好きにしなさい。どっちを選んでも結果は同じだから」
フローナは実験動物を見るかのような酷く冷たい瞳で、鼻をへし折られた魔女を見下ろした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます