第104話 勘のいい奴は嫌いだ

「え?じいちゃんが来てる?」


死に体の郷間を引き連れてダンジョンから出ると、スマホに母からの着信があったのでかけ返して見た所――


祖父が家にやって来て、俺と会いたがっていると聞かされる。


「ああ、うん。わかった」


祖父と会うのは一年ぶりぐらいだ。

俺が帰還してすぐに一度顔を合わせてるんだけど、あの時の俺はやさぐれてて、心配してくれていた祖父に塩対応してしまっていた。


「じいちゃんに悪い事しちまってるし、謝らないとな。後、御礼もしないと」


通話を切り。

一人呟く。


――異世界から帰還したばかりの俺は、失意から抜け殻同然だった。


そんな俺から、両親は色々と話を聞きだそうと腐心する。

ま、あたりまえだよな。

5年も行方不明だった息子が何をやって来ていたのか、気にならない訳がない。


けど、当時の俺は、自分の体験を一切話さなかった。


あの辛い思い出を話す気にならなかったってのと。

仮に話しても、どうせ頭がおかしくなっただけって思われそうだったって理由から。


力を使えば信じて貰えたんじゃ?


そうだな。

けど、もし力を使って化け物扱いされたら?


当時の弱り切ってた俺には、そんなの耐えられる訳もない。

そういう部分もあって、俺は何も話さなかった。

話せなかった。


ああ言っとくけど、その時点ではダンジョンも覚醒者も知らなかったからな。

まさか受け入れて貰える土壌があるなんて、夢にも思ってなかったし。


で、だ。

そんな煩わしい両親の詮索をシャットダウンしてくれたのが、他でもない祖父である。


『気になるのは分かる。じゃが……今は蓮人が帰って来た事だけを素直に喜び、蓮人自身が自分から話せるようになるまで待ってやらんか?思い出したくない事も、話したくない事もあるじゃろう。辛い思いをしたんなら、あの子にはゆっくり休む時間が必要じゃ』


そう祖父に言われ、両親は俺から話を聞きだそうとする事がなくなったのだ。


「あの時じいちゃんが両親を宥めてくれたおかげで、俺も嫌な事を思い出さずにギャルゲーに没頭できた訳だからな」


失意のどん底でギャルゲーしてたのか?

してましたが何か?

この世の中に、ギャルゲー以上の癒し効果はねーっての。


体の回復期間にギャルゲーしてたのだって、そのためだ。


魔王が地球に居る事に対する焦りと不安を、俺は払拭する必要があった。

そんな物を抱えていたのでは、勝てる物も勝てなくなるから。

だから俺は心を落ち着かせるため、一心不乱にギャルゲーに打ち込んだのだ。


まさにギャルゲーイズゴッドである。


「しかし……問題はこの体だな」


今の俺は10歳程度の姿に固定されている。

限界突破の影響か、魔法やスキルによる偽装が弾かれてしまう状態だ。

そのため、本来の姿を装って祖父の前に出る事が出来ない。


「ふむ……分身魔法はどうだ?」


自分の姿を偽装できないのなら、分身で試してみてはと思いつき、魔法で分身を生みだしてみる。


「分身も当然子供の姿だわな。どれどれ……」


分身は自分と同じ姿をしている。

が、通常は調整すれば姿の変更は可能だ。

なので試してみる。


「お、行けた」


本体は無理だったが、分身の偽装は問題なく成功した。

これを使えば、祖父の前に姿を現す事が可能だ。


「まあリモートな訳だが……」


直接顔を合わせられない事は心苦しいが、まあしょうがない。


「う……蓮人……」


死に体の郷間が顔を上げる。

そうして呟く。


「お前の足は……もっと短い……ぐぇっ!?」


ちょっと足を長めにしただけなのにそこに気づくとか……その勘の良さがお前の命取りだ。


俺は頭にでかいコブの出来た郷間を奴の部屋に突っ込み、祖父に会うために出かけるのだった。


まあ分身だけ行かせてもよかったんだが……


せっかくだから直接、て言っても遠くからだけど、祖父の顔でも見ておこうかと思ってさ。

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