規格外のストラテジー~異世界帰りの勇者、知り合いにばれてダンジョン攻略に駆り出される~

まんじ

働きたくないでござる

第1話 帰還

平凡な人生を送っていた勇気蓮人ゆうきれんとは、中学の卒業式の日、異世界へと召喚されてしまう。


異世界へと召喚された彼に求められたのは、魔王の討伐。

そのために与えられた力は、ありとあらゆるスキルを習得する事が出来るというチート。


そして勇気蓮人は与えられた力で成長し、5年と言う歳月をかけて魔王を倒して世界を救う。


「勇者様……貴方には感謝してもしきれません。本当にありがとうございました」


「礼はいいから、さっさと元の世界へ戻してくれ」


勇気蓮人は戦いに明け暮れた日々に疲れ切っていた。

そのためか、感謝の涙を零す美しい召喚士すら彼は冷たくあしらう。


「どうか、これをお持ちください」


勇気蓮人は女性から小さな指輪を手渡される。


「これは?」


「それはいずれ必ずや、貴方様の役に立つはずです」


よく分からない物ではあったが、特に断る理由が無かったため、彼はそれをポケットにしまい込む。

それを確認した召喚士の女性は、ゆっくりと魔法の詠唱を始める。


それはかつて勇気蓮人を召喚した物と、全く逆の性質を持つ魔法。

異世界を救った彼を元の世界へと返す、送還の魔法だ。


「ご武運をお祈りしております」


「武運?」


元の世界――少なくとも彼の居た日本は、血みどろの戦いなどとは無縁な場所だ。

召喚士の謎の言葉に、勇気蓮人は首を捻った。


――だが、彼がその疑問を口にするよりも早く、送還の魔法が発動する。


「最後の言葉が気になるけど……まあ、気にしても仕方がないか。それよりも――」


彼は周囲の様子を確認する。

そこは人気のない公園だった。

近くには縦長のマンションが複数並んで建っている。


間違いなく、そこは現代日本だ。


「俺は帰って来たぞ!!」


一見何の変貌もない懐かしい風景に、帰ってきた事を実感し、彼は歓喜する。

だが勇気蓮人は知らない。

彼の居ない間に、世界に大きな変化が起こっていた事を。


そう、ダンジョンと呼ばれる物の存在を。

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