夜道

ため息のような風を浴びて歩く。


ここは空の瞼の裏側。


昼の残影。都合のいい積木細工。


   道路を走る車を見ろよ。


   あれは走馬灯。


   一日というやつが死の際に見る、


   幸せと後悔の荷車だ。


   馬鹿なヤツだよ。


   死にたくなければ生まれなければいいのに。


男はそう言って車道に飛び込んだ。


そしてトラックに当たると文字になり、


やがて線になり散った。


あれは言葉だ。


今日、私が発せなかった言葉。


線をひとつ拾い、口に入れてみる。


それは苦いブラックコーヒーの味がした。

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