ひとつの竜

ひとつになるのだという。


元々無数にあったもの、


数えられないものがうねり、燃え、


隆起し、重なり、食い、孕み、吐き出し、


そうして出来上がった竜が、


己の虚から転がり出たものを、


もういちど腹に収めたいのだという。


砂鉄の海、針の砂浜、


硫黄の川、剃刀の街。


そうしたものを飲み込んで、


ひとつになるのだという。


竜は病み、そして老いている。


捨てた鱗の鮮やかな色と、


生き生きとした生の律動よ。


それは竜がひとつではないことを


這いずりながら叫んでいる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る