3.サバイバル実習 その⑥:ヘレナの立てた作戦は無視する!
それからの私たち落ちこぼれコンビは、クラスから与えられた役割を完璧にこなした。
二日目~四日目までは何度か『空き巣』を成功させて、いくつかの『拠点』を戦闘なしで奪うことに成功したし、少人数対少人数の戦闘にも一度だけ勝利を収めている。
しかし、五日目以降は流石に対策を打たれたのか、必ず誰かが防衛戦力として出張ってくるようになり、なかなか思うように『空き巣』ができなくなった。唯でさえ能動的な活躍ができていないというのに数少ない貢献の機会まで封じられてしまい、次第に焦りが募ってゆく。
そして、そんな状況が変わらぬまま遂に『サバイバル実習』は最終日を迎えた。
〔図7.最終日 開始前 https://bit.ly/3MURxLe〕
現在のポイント状況は以下の通り。
一位:
二位:
三位:
取って取られての一進一退を繰り返し、ポイントはほぼ横並びで拮抗していた。
そう、拮抗である。
我々
その結果、我々
そして、我々
しかし、言うは易し行うは難し。結果論を言うのであれば、流れを変えた方が良いと分かっていながら、全体の修正をできなかった己をこそ恥じるべきである。
最終日、一回戦。
ここでヘレナの采配が光る。
これにより、ようやく
そして、三回戦第3セクション目を迎える頃には、三勢力の版図がアメーバのように入り乱れるような形になっていた。
〔図8.最終日 三回戦 第3セクション前 https://bit.ly/3JksvDc〕
この急変する戦況に対し、我々
このまま終了した場合、次のようなポイントで終わってしてしまう。
一位:
二位:
三位:
しかし、まだ三回戦・第3セクション――つまり、私たちの最後の攻撃はこれから始まるところだ。逆転の芽はある。
例えば、アメーバ状に入り乱れた戦線の随所に生まれた『急所』を突き、分断によって孤立した『拠点』の一挙獲得を狙う方法だ。
〔図9.急所 https://bit.ly/3CLsd5C〕
問題は、相手もそういう『急所』は厳重に守ってくるだろうということだ。実際、三回戦第1・第2セクションの時にはそういう分断狙いの攻防が各所で起こっていたが、どこもその一つとして陥とすことは叶わなかった。そして、その結果としてこのようなアメーバ状の版図が生まれたのである。
難しくはあるだろうが、やはり考えれば考えるほどに
私は、覚悟を決めた。
三回戦・第3セクション。泣いても笑っても最後の移動時間が始まった。
上空には飛行できる
「予定通りに行く――諸君、健闘を祈る」
風魔法によりヘレナの最終指示が伝達され、
ヘレナの立てた作戦では、途中まで分断のための『急所』狙いに見せかけて、移動時間終了ギリギリに反転し、その周辺の『拠点』を狙うことになっている。相手は奇手を打つ必要がないから堅実に『急所』を守ってくると見て、こっちから奇襲をしかける訳だ。
私に割り振られた動きも頭に入っている。まず私とルゥは
だが、私はそんなケチな作戦に従ってやるつもりはこれっぽっちもなかった。
確かにこの作戦が完全に成功すれば『急所』を攻めずとも逆転できる。だが、これは追い詰められた末に一か八かの賭けに出たようなもの。正直、成功する確率は低いと私は見ていた。
「リ、リンさん。そろそろ私たちも作戦通りに移動を……」
「いいえ、作戦は変更よ」
「えっ?」
驚いたようにこちらを振り向くルゥとメリアス。そうして並んでいると、二人は本当の姉妹のように見えた。
「分からない? 私たちは軽んじられているわ! このままだと、何の成果も挙げられないままクラスの結果を背負うことになる。――それだけは絶対に嫌!」
ハッキリ言い切ると、ルゥも私の意図を半ば察したようで顔を青くする。
「つ、つまり……?」
「ヘレナの立てた作戦は無視する!」
「え、え、えぇ~!?」
面食らうルゥの手を無理矢理に引っ張り、6-7(3)とは全く違う方角へ歩き出す。
「ど、どこへ行くんですかぁ~?」
「
「そ、それって……思いっきり
〔図10.狙う急所とそれにより孤立する拠点 https://bit.ly/3warSIt〕
もし
私が
しかし、それでも行く。
その時、正面の方から怒号が響き渡り、次いでドタドタと生徒の集団がこっちへ走ってきた。その集団の先頭を走っていたマチルダが、手を繋いで歩く私たちを見て驚きの声を上げた。
「ア……アナタたち! どうして、こんなところにいるのよ!」
「道に迷ったのよ。ねえ、グィネヴィアはこっちに居た?」
「アナタ――っ! くっ、もう移動時間が……勝手になさいな!」
どうやら、分断狙いの偽装が終わって移動を始めたところにちょうど居合わせたようだ。狙った訳じゃないが、うだうだ説明を求められずに助かった。
すれ違うマチルダ隊を見送りつつ2-6(1)に到着すると、散開した
だが、向こうがそう簡単に『空き巣』をさせてくれるとは思えない。
「来るぞ、リン」
「ええ、分かってるわ」
案の定、移動時間終了間際に空から白っぽい塊が墜落してきた。
「――セーフ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます