さらば16、暗闇17

古井論理

さらば16の私

 暗闇の中から見る光ほど明るいものはない。見えたときの安心感たるや、何と形容して良いかも分からぬものがある。

 15の私は灯りを見た。そしてそれに憧れた私は、今になるまでそれに没頭した。そして私は、今日を終える。

「人格を疑うよ」

「気に入らん」

「生理的に受け付けない」

「そんなものを入れるな」

「その考え方はすごく嫌だ、やめろ」

「何も関係ないものをさも深い関係があるかのように書くな」

 ふざけるな。そうだ、ふざけるな。私は最善を尽くした。私は努力した。私は誰よりも働いた。それなのに、どうしてあなたたちはよく働いた私の働きを過ちのように語るのか。先生の許可ももらった。先生はゴーサインを出した。それは確かに聞いた。

「俺は確かに良いと言った。でもそれはなんというかそういう意味じゃない」

 糞野郎が。何が先生だ、餌付けされるだけの馬鹿犬じゃないか。私はあなたたちの意見をよく取り入れたと思います。はっきり言いましょう、私は妥協した。それなのになぜそちらは一切妥協しないのか。

「道徳的にまずい」

 どこがまずいのだ。私が一度でも道徳的にまずいことを描いたか?戦争を賛美したか?

「戦争という言葉が出るだけでまずい」

 言葉狩りか。腹立たしい。ふざけたことを言うものではない。そこまで言われるのなら私は降りる。

「どうぞ降りてください。止めません。すでに代わりはできているのですから」

 返す言葉がなかった。去年の夏、私は押しつぶされた。

「古井くんの小説は面白いよ」

 それならなぜ伸びない。面白い作品をよく宣伝して、なぜ伸びないんだ。評価と現実は乖離していく。そして私は、受験生となる。

「明日からは勉強に集中しろよ」

 母と父はあと一日たりとも待ってはくれないだろう。私は一旦やめなければならない。

 ものを書くことをやめて、明日からは受験生。正直、どんな大学に入ろうがどんな大学に落ちようが、家の財政がなんとかなればそれでいい。私は何にもなれやしない。

「只今午前零時をお知らせいたします」

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