第77話

陛下と久しぶりに会った次の日。


驚くぐらいの犯罪があった翌日だ。


晴れやかな晴天だった。眩しいくらいの光がさしている。




私はお客さんのために、お昼の用意を始めていた。




毎日食事を作っているはずなのに、なんか久しぶりにご飯を作る気がするわ。


昨日の出来事の内容が濃い内容だったからだろう。




私はそんな事を考えながら下拵えを始める。


今日のメニューは、管理番のリクエストに沿った内容だ。


昨日はさんざんハラハラさせ、心配させたお詫びに好きな物を作る約束をしたからだ。




メニューは意外に地味な内容だ。


管理番はヘルシー嗜好。


ご飯・筑前煮・冷奴・酢のもの・お味噌汁・プリン


全体的に和食なのに、プリンだけ違和感があるのは私だけだろう。




今日のお客さんは、管理番・商人・隊長さんの予定だ。


隊長さんを招待した理由は、今後『ざっくばらん』に話してもらうことになったので、商人も呼んで、顔合わせしてもらうつもりなのである。




今後隊長さんは、私の専属護衛になるという。


そうなると確実に商人と会う回数は増えていく。


偶然会ってしまうと驚いて気の毒だから、管理番に頼んで今日、離れに来てもらうことにした。


予定外の事だから商人には申し訳なかったけど、そこは勘弁してもらおう。




まずはプリンを作る。冷やすことも考えて最初に作って保冷庫に入れる。


次は出汁を作る。その間に豆腐の水切りと野菜を切って。


お味噌汁の具材は何にしようか。豆腐は冷奴に使うし。・・・


ワカメ(商人が頑張って見つけてくれている)と玉ねぎにしよう


火がはいると甘くてしんなりとする。けっこう好きな食感だ。完全に私の好みで決めてしまった。


酢のものは変わり種でキュウリとキャベツに決定・・・




そうしている間に出汁が出来上がったので、野菜を炒め筑前煮を作っていく。


無い材料や代替の物を多用しているので、本来の作り方ではないが、美味しく出来上がるのでご満悦になる。自画自賛だ。


少なくともここで出される料理よりは美味しいと自負している。




商人のおかげで食材は増えているし、我慢できずに自作しているものもあるが、それでも足りないものが多い。前の生活がどれだけ恵まれていたか、わかると言うものだ。




「失礼します。管理番と商人が参りました。」


隊長さんが声を掛けてくれる。




侍女達があんなことになったので、王宮から臨時の侍女さん達が昨日は来てくれていた。


今朝は私の身支度を済ませると一度王宮に引き上げている。


何でも宰相から、新しい侍女の選定があるのだそうだ。それが決まってから配属になるらしい。


因みに、この話は隊長さんから聞いた話だ。


なので今離れにいるのは私と隊長さんだけだ。


いや、管理番と商人も来たから4人か




「いらっしゃい」


私は2人を迎え入れる。




「「失礼いたします。」」


入ってきた2人は強張った顔になっている。


やはり隊長さんに対して緊張しているようだ。何時ものにこやかな様子が無い。




「2人ともどうしたの? 隊長さんに緊張しているの?」


「それは、まあ。緊張しないほうが難しいかと」


商人が代表して答えてくれる。




「そんなに?」


私は隊長さんを見上げる。隊長さんはニコニコした様子を崩さないし、詳しいことを話さない。


自分のお家のことは話してくれる様子はなさそうだ。




隊長さんの後は商人達を見る。緊張は取れそうにない。




こんな調子で美味しいご飯を食べれるかな?


私はご飯は美味しく食べたい人だ。


この調子では、『美味しく食べられない』と判断した私は、強制的に自己紹介をさせることにした。


コミュニケーションは最初が肝心だ。


自己紹介をして仲良くなる切っ掛けを作ろう。


そして、美味しくご飯を食べよう。




美味しいご飯を食べるためだ。


全員で自己紹介をしよう(私も含む)

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