第24話

私はダイニングテーブルに唐揚げ定食を並べた。


ご飯、唐揚げ、サラダ、スープ。予定通りだ。デザートがあれば良かったのだが、そこまでは用意できなかったので妥協する。


「味噌汁がないのが残念だけど。無いものは仕方ないもんね」


私は仕方ないと、諦めを呪文のように口にしていた。


味噌汁が無いだけで後は納得出来る定食だ。




「無いものが多い中でこれだけできれば上出来、上出来」 


自分で自分を納得させながら椅子を引き、定食の前に座る。


長年望んでいた食事ができたことに喜びどと、厳かな気持ちになり手を合わせた。




「いただきます。」


お皿を持ち上げ(ちゃわんが無いため)白米をうっとりと見つめる。


フォークを手に取り(はしがないので)ご飯を口に運んだ。


味わうために白米を一口、二口と噛みすすめ、何度も味わい噛み締め飲み込んだ。


「あ~ 美味しい~ 幸せ~」


お米は問題なく炊けていた。今まで(前の生活)の経験が生かされた形だ。土鍋でご飯を炊く習慣で良かったとしみじみ思ってしまった。




次は唐揚げだ。


いつもの唐揚げと味付けが違うので少し心配している。


何時もなら肉そのものにハチミツ、揉み込むタレには生姜、ニンニク、醤油、水を含ませる。量は何時も適当。家庭料理なんてそんなものだ。


その適当なものの中で1番大事な醤油がない。大きく味が変わるだろうと心配している。


醤油は日本の母だ。日本料理の全て(ちよっと大袈裟だけど)と言っていい程使用されている




「大丈夫かな…」


フォークで唐揚げを刺す。


自分で刺して何だが、行儀の悪さに眉が寄った、がそこには目をつぶる。




目の前に唐揚げを持ち上げ眺める。その後はクンクンと匂いを確認した。


醤油の匂いが無いだけで何時もの唐揚げの匂いだ。 




「よし」


匂いを確認した私は唐揚げを口に入れる。恐る恐る肉を噛みきった。


肉の旨味が口に広がる。醤油の香ばしさがないのが残念だが、塩で引き締まった味になっている。  


醤油の香ばしさが無いのは残念だが納得のできる味になっていた。


塩味は塩味でなかなか美味しい出来上がりだ。


これで醤油があれば… もっとおいしくなるのに…。


「やっぱり醤油は偉大だな~」




サラダやスープは問題ない。


私はご飯、唐揚げ、スープと三角食べをしながら定食を味わう。


誰にも見張られていないので、ゆっくりと食べられるし心も穏やかだ。


「なんて幸せな時間…」




私は身もだえながら決心した。


今度から三食、自分で作ろう。




この幸せで美味しい時間は手放せない。


侍女に食事の用意は不要になること。 


食材の用意をお願いすることにした。


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