第50話

 おじさんとわたしは約束をする。


 ① 真面目にリサと話をする事


 ② 話を誤魔化さない


 ③ 話を一方的に切り上げない 


 これでリサが納得するかは分からない。でも、これ以上はわたしには思いつかなった。この条件でリサと話をしてもらう事にする。


 話をあする日は仕事が終わった後だ。仕事の前だと時間が気になって落ち着いて話せないと思ったからだ。




 条件を決めるとわたしはリサの部屋に行く。


 「リサ。入ってもいい?」


 「パル? もちろん。どうぞ」


 リサの部屋に入る。リサの部屋は小さいけど女子らしい可愛い部屋だ。わたしの部屋とは大違いだ。いつもこの感想を思うが私の部屋が改善されることは無い。


 勧められたクッションに座りながらおじさんとの話を切り出すことにした。リサが望んでいた形だと良いのだけど。


 「リサ。わたしが出来るだけの協力をするって言う話を覚えてる?」


 「もちろん覚えてるけど? それがどうかした?」


 「おじさんと話をしたの。リサと真面目に話をしてほしいって。おじさんも約束してくれてわ。次の休みの前の日に話をしてくれることになったの。仕事が終わってからね」


 「本当に? どうして? 今まで聞いてくれなかったのに」


 「なんかね。リサの反応が子供だからって思ってからみたい。おじさんには悪いけど少し脅しちゃった。このままだと子供に信じてもらえなくなりますよって」


 わたしがちょっとだけおどけてそう言うと、リサはふざける様子はなく頷いた。


 「そうね。パルの言う通りかも。このままだったらお父さんたちを信じられなくなりそうだったから」


 「そ、そうだったんだ。なら、この話は丁度よかったかも。リサにとってどうなるかは分からないけど。話をしてみてね」


 「ありがとう。パル。お父さんたちと話をしてみるね」


 リサはそう言いながらも少し不安そうだった。話してもらえないと怒りながらも、いざ、その時になると不安が出てくるのは普通だと思う。その気持ちに同意しながらもここはリサ自身が考えるしかないので頑張ってもらいたい。これ以上わたしにできることは無いのだから。




 「いよいよだね」


 「うん。大丈夫かな?」


 おじさんとの約束の日になった。リサは学校にいるときから少し緊張している様だ。無理もない。父親とはいえ大人と話をするのだから緊張するのは当然だと思っている。でも、自分自身が望んだことだ。そこは頑張ってもらいたいと思っている。


 「難しく考えないで、気になっている事を一つ一つ聞いていけばいいよ」


 「そうだね。そうする」


 リサは緊張しながらもはにかんで見せた。わたしは上手くいく事を祈りつつ家路についた。結果を聞けるのは明後日くらいかな? と予想していた。


 そう思っていた時もあった。




 「おはよう。パル」


 「おはよう。じゃなくて、なんでリサがいるの?」


 翌日の早朝、私の部屋にリサがいた。いたというか、起こされた。わたしのベットに半身を乗り上げわたしを揺さぶってきたのだ。


 リサの顔が少しむくんでいる様だ。何となしに表情もすぐれない様子。この分では昨夜の話し合いが上手くいかなかったのだろう。そう辺りを付けると邪険にもできなくて、話を聞く体制になってしまう。


 この様子だと話は長くなりそうだ。取り敢えずは顔を洗ってご飯を食べるくらいの時間はもらう事にしよう。

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