第36話 インタビューで牽制していくぅ!
「ここが遠藤氏が消息を絶ったというダンジョンです。見て分かる通り、中に侵入しようという探索者の姿は見えません。あのすみません、少し取材を――」
「すみません。ちょっと映さないでもらえませんか」
ダンジョンモールの入り口を抜けると、どこかのテレビ局のカメラマンが【NO5】の前で撮影を行っていた。
見た感じ生放送かな?
探索者からしたらこんな放送たまったもんじゃないな。
【NO5】に侵入出来ない理由を理解している一般人ならともかく、他人事だと思ってネット上で救助に向かわない探索者を批判をしている一部の厄介者はこの映像を見て余計に燃えるだろうから。
企業からしても自分のところの探索者が炎上騒ぎなんて避けたいはず。
あんなインタビューを受ける人なんている訳がないのに、ここにいるテレビクルーはいやいや上の指示で来たってところかな。
内容がどうであれ視聴率は稼げそうだし。
「――あっ! あなたはもしかして」
――やっばぁ、声掛けられた。
いや、でも別に俺はヤバくないか。これから【NO5】に向かうわけなんだから。
ここは胸張ってインタビューに受けてあげよう。
「最近SNS上で話題になっている探索者、神の宮下さんですよね?」
「神っていうのは大袈裟ですけど、話題にはさせてもらっています」
「最近投稿されてた動画も拝見させていただきましたよっ! あんなに凄い魔法を使えるのにレベル10っていうのは本当なんですか?」
「はい。画面越しでもある程度レベルが上がった探索者であれば相手のレベルの確認が出来るはずですので、気になるという事であればだれかに依頼してもらえると」
「そうなんですねぇ! そのぉ今回我々は探索者さん達にこの質問を投げかけていまして……神の宮下さんは本日どこへ向かわれる予定ですか? コボルト肉を提供する焼き肉屋さんに雇用されているという事でしたのでやはりコボルトのいる――」
「いえ、今日は【NO5】に向かう予定です」
「!? もしかして、遠藤氏の救出に!?」
カメラマンとこのインタビュアーは嬉しそうな表情で顔を見合せると、ぐっとマイクを近づけてきた。
番組からして俺と会えた事だけで少し安心した気配も感じていたけど、【NO5】への侵入はとんでもないスクープになるんだろうな。
撮れ高に貢献したから謝礼とかもらえないかな。
「……。遠藤さんとは焼肉森本との提携について話もしていて。『佐藤ジャーキー』さん主導でコラボ商品を出したりとか、それ以外の企画も遠藤さんがいなければ進まないはず。『佐藤ジャーキー』さんと対等な協力関係にある、いや、お願いされてなので対等以上なのかな? そんな身としてこれくらいの事をするのは不思議じゃないですよ。そもそも知った仲である遠藤さんを助けるにに利益云々っていうのは後付けでしかないんですけどね」
「提携ですか。それってここで話してもいい大丈夫だったんですか?」
「焼肉森本の店長は大丈夫って事なので。さっきも言った通り、元々今回の提携のお話は向こうからお願いしされているもの……。店長が大丈夫っていえば大丈夫なんですよ」
「なるほどですね貴重なお話ありがとうございます。コラボ商品の発売楽しみにしていますね」
「はい。それと、ここのダンジョンにいるオークの肉で新商品も考えているので、焼肉森本のファンの方々は期待していてください。では失礼します」
「ありがとうございました! いやぁ、流石神の宮下さんですね。どれ位の期間で戻られるかは分かりませんが、あの余裕な態度に期待してみましょう。それではスタジオにお戻しします」
……対等以上の関係っていうのをしつこく言ってやったぜ!
これで提携後に『佐藤ジャーキー』がなんかごねても、世論が味方になってくれるはず。
ワンチャンこの放送を見て遠藤以外の人でこの話を進め始めてくんないかな。
いやぁ、それにしても俺の機転凄くないか?
店長、景さん、一ノ瀬さんに褒められている画が勝手に頭に浮かぶなぁ。
「ちょっとテンション上がってき――」
「ぶもぉおおおっ!!」
ダンジョンに足を踏み入れると早速二足歩行の豚のモンスター、【オーク】が豚っ鼻を存分に生かした鳴き声で俺の目の前に現れた。
しょうがないなぁ初っ端は景気づけに思いっきり攻撃を喰らわしてやるよ。
「――【ファイアボール】っ!!」
ちょい溜めのファイアボールはオークの体を一瞬で燃やして、勢いを殺さずダンジョンの奥でも炸裂した。
「ぶ、ぶもおお!?」
爆発に驚いたのか隠れていたオーク達が驚きの声を上げて、どこかに逃げていく。
俺、人を助けに来たっていう救世主的立ち位置なんだけど……これ、オークの巣を襲う悪者、魔王とかそんな表現の方が合ってないか。
「まぁいいや。お前らは景さんが作るオーク肉の生姜焼きの材料になってくれや」
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