7
耳を澄ますとそれは花火の音だった。近くで花火がうち上がる音が聞こえてきた。その途端、俺は思い出した。
――そういえばこの前、千里が花火大会に行こうと誘ってきた。そしてそれは今日だった。俺とした事がその約束をすっかり忘れていた。それと同時に、彼女からのメールの意味に気づいた。
その瞬間、千里が俺のことを今も待っていると思うと居ても立ってもいられなくなった。そして、最後の力を振り絞ると今まで以上にドアをバンバンと叩いて助けを呼んだ。喉もカラカラで声を出すのも辛かったけど、俺は構わずに助けを求めた。そして、最後の力を出しきるとそこでついに力尽きた。もうドアを叩く気力もなくなった。もうダメだと悟った瞬間、そこでエレベーターの明かりがパッとついた。それと同時に扉が開いた。
「大丈夫ですか!?」
扉が開いた瞬間、警備員がライトを照らしてきた。俺は助けてくれと手を振った。警備員はそこで慌ててエレベーターの中に乗り込むと、外に引っ張り出してくれた。エレベーターの外は涼しかった。警備員が、何かを言っていたが、俺はそんな事よりも水をくれとジェスチャーで伝えた。そして、まもなくすると警備員がペットボトルを手にして戻ってきた。俺はそれを奪うと慌てて一心不乱にゴクゴクと飲み干した。
「あの、大丈夫ですか……?」
警備員がそう言って尋ねてくると、俺は何も答えずに鞄を手に持つとフラフラと前に歩きだした。そしてそのまま、彼女が待っている場所へと歩き出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます