5
ジッとしていても汗をかいた。空調も切れていて、何だか息苦しい。俺は汗だくの状況の中、ウエットティッシュで汗を拭いた。
さすが爽快なウエットティッシュ。やはりこれは、神だ。これで拭くと一瞬だけ涼しくなる。だが、それも一時でまたあとから段々と体が熱くなった。
「あっ…! 暑い…! このままでは本当に熱中症になる…――!」
閉じ込められたエレベーターの中で危機感を募らせると、再び立ち上がって通話ボタンを押した。
「おーい! 誰かいないのかー!? そこに居たら、助けてくれー! エレベーターに閉じ込めらたー!」
そう言って通話ボタンを押しながら、目の前のドアをバンバン叩いて助けを呼んだ。だが、相変わらず扉は閉まったまま反応がない。そうしているうちに時間ばかりが無駄に過ぎて行った。
――あれからどれだけ時間が過ぎたのだろうか、蒸し暑いエレベーターの中で死にかけた。最後のウエットティッシュを1枚手に取ると顔を拭いた。その最後が切ない。俺は暑さで意識が朦朧とする中、彼女の顔が急に浮かんできたのだった。
千里の「待ってる」と言うメールの内容を突然、思い出すと気になった。きっと今頃、もう帰ったのかも知れない。また俺は千里との約束をすっぽかした事になるのか……。
熱さで段々と意識が朦朧とする中、そんな事が頭の中をグルグルと繰り返し回った。
ああ、ダメだ! 全然、思い出せない!
なんて俺はダメな奴なんだ!
彼女との大事な約束破って俺は…――!
そんな時、急に虚しくなってきた。今思い返せば、俺は千里にとってダメな彼氏だ。平気で約束をすっぽかすのは今では当たり前になっている。付き合い始めた時はもっと真剣に恋愛をしていたのかも知れない。それに約束をすっぽかす事もなかった。なのにいつから俺は、千里との約束を平気ですっぽかすような奴になったんだろう。その度に仕事を理由にして、彼女を怒らせてばかりだった。なのに千里はこんな俺に今もついて来てくれる。そう思うと虚しさと同時に彼女に対して、自分がいい加減でダメな奴と深く反省した。
仕事仕事ってその度に彼女との約束を破ってきた。仕事が大事なのは本音だ。だけどそれは言いわけで、俺はいつの間にか、恋愛に真面目になれず。千里との関係もいい加減になっていたんじゃないかと思うと、俺は心から反省した。
「ああ、このまま俺はここで死ぬのかな……。きっとこれは天罰だ。千里のことを沢山悲しませたからな、きっとこれは天罰だ。きっとそうに違いない……」
そう言いながら床に倒れ混むと真夏の蒸風呂状態のエレベーターの中で彼女のことを強く思った。
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