第33話 国王の三文芝居

「ふむ、つまりは公爵の意志としてミラナリアとの婚約破棄を行いたいということだな。」


「婚約破棄も何も陛下が勝手にそういう風にしてしまっただけですけど、端的に言えばそうですね。」


すると、国王は神妙な顔つきになって何やら考えている。そして、あることをミラナリアに尋ねるのだ。


「ミラナリア、公爵はこう言っているが君の気持ちはどうだ?私としては公爵の婚約者として、これから二人で思い出を作っていってほしいと思っているのだが。」


「えっ?私ですか?別に公爵様が嫌がっているのでしたらそれでいいですけど?」


ミラナリアとしても別に彼と結婚をしたいと思っているわけではないので国王の問いかけには正直に答える。すると、国王は残念そうにして、頭を抱える演技をする。


「そうか、それは残念だ。だが、そうなると君の理想の生活を叶えてあげることはできないな。だって、公爵が養ってくれないならぐ~たらもできないし、メイドに世話もしてもらえない。あぁ、あとはこの婚約者たちの肖像画もまだまだ仕訳けないといけないな。」


「そ、それは困ります!やっぱり公爵様とは婚約者でいたいです!私を捨てないでください。」


国王のわざとらしい態度に、ようやく彼が何を言いたいのかを察するミラナリア。自分の理想の生活を守るために彼女も国王の芝居に乗ることを決めたのだ。


しかし、そんなことは公爵からしてみればたまったものではない。ミラナリアと婚約してしまえば、いつか他国の偉い人間を怒らせてしりぬぐいをしなければならないことなど、容易に想像することが出来る。


「心にも思っていないことをよく言えますね。あなたの面倒を見るなんて絶対にお断りです。あなたの恐ろしい口撃が暴発する瞬間に立ち会いたくなんかありません。」


公爵は断固として拒否するがそんなことは既に国王の想定内だ。国王は最後のとどめの一撃を公爵に言い渡す。


「それは困るな、公爵。メロロ王国のことを覚えているだろう?理不尽にミラナリアに婚約破棄を言い渡したから国が滅んだのだぞ?もしも、お前が婚約破棄などしてしまえばいったいどうなってしまうか?


私は怖くて、怖くて眠れそうにない。それに、国のためにその身を使ってくれるのだろ?ここで婚約破棄をしてしまえばそんなお前の言い分とは真逆の行動をしていることになると思うのだが?ミラナリアはどうするのだ?こんな公爵だが婚約破棄をしても許してくれるか?」


国王はミラナリアにウインクをして嫌だと言えと言っている。もちろんそんなサインを見逃すミラナリアではなかった。

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