第20話 ついに辛辣が発揮される!
本日はいよいよサクラ王国とメロロ王国の親善会談の当日である。すでに、兵士たちが見守っている部屋にサクラ王国の国王と公爵、ミラナリアの三人が待機していた。
しばらくすると、執事と思われる人間がメロロ王国の到着を告げ、彼らが部屋へと入室し、三人と向かい合っている椅子に着席する。それはミラナリアの因縁の相手であるメロロ王国の現国王と宰相であった。
「サクラ国王、本日は急な会談であるにもかかわらず、応じていただきありがとうございます。」
初めにそう切り出したのは宰相だった。その言葉に部屋の中の人間の反応は二つに分かれる。一つは会談の要請を受けて当然というメロロ国王である。
そして、もう一つはサクラ国王、公爵、ミラナリアの断れないのを知っていて要請したお前たちが言うなといったものだった。
「サクラ国王、今回の会談の目的は我が国と貴国の関係を話し合うことだが、どうして私の婚約者がそちらの椅子に座っているのでしょうか?」
メロロ国王はいかにも不思議であるといったような表情を浮かべている。
「はて?婚約者ですか、それは初耳ですね。公爵に聞いたところによれば彼女は誰とも婚約関係を有していないそうですが。それに不思議な話ですな、平民である彼女と王族であるあなたが婚約者ですか?」
「なにもおかしなことなどありません、わが国は平民と言えども優秀な人材は積極的に貴族との婚姻を認めているのです。それに、婚約の有無を貴国の公爵に確認をとるということこそ、おかしな話ですな。
いくら大国である貴国と言えども力づくで私と婚約者の中を引き裂こうとするのは許せませんな。彼女に利用価値があるからと無理やり囲っているのは監禁と変わりませんぞ。」
そんなメロロ国王の言葉に周囲で控えているサクラ王国の兵士たちは殺気立つ。しかし、あらかじめこのようなことを想定していたサクラ国王はお前が言うなとは心の中で思いはするも終始、努めて冷静だった。
「もちろん、公爵だけではなく本人にも確認は取っています。その結果、本人の口から婚約者はいないと言われましたのであなたの言うことには無理があります。
それに彼女自身の意思でこの国にとどまっているのです。彼女が自分から出ていくならまだしも、わが国から追い出すようなことをする気はありません!」
「話になりませんな、平民が国王にそう言われてしまえば従わざるを得ませんでしょう。それは立派な脅迫ですよ。サクラ王国も落ちたものですな。さぁ、婚約者である私の元へ来るんだ、本来の居場所に帰ろう。」
彼が先ほどまでサクラ国王に言っていた言葉すべてが自分に当てはまるがそれを指摘するものはこの場にいない。一見、提案するようにミラナリアに手を差し伸べているがその眼を見れば一目瞭然だ。
平民風情が手をかけさせるな、さっさとこちらへ来いと言っているのが明らかだった。前世の記憶を取り戻す前のミラナリアであればメロロ国王の言いなりになっていたかもしれないが今の彼女には前世の記憶もあり、サクラ国王や公爵も付いている。そんな彼女の答えはただ一つだった。
「行くわけないじゃないですか、頭沸いてるんじゃないですか?むしろそこまで手のひら返しができるとか一種の才能ですよ。あっ、たぶん頭がわいているので分からないと思いますから言っておきますけど、今のは本当に褒めているわけでなく、皮肉ですからね。」
彼女の言葉にこの部屋にいる二国の国王、宰相、公爵、兵士たち全員が凍り付いてしまった。
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