第3話 襲われている一団を発見すれば、とる行動はただ一つ

いま、ミラナリアは帰らずの大森林を一人、彷徨い歩いている。帰らずの大森林とは凶悪な魔物たちが数多く住みつき、森に入ったものは無事に帰ってくるものがいないと噂されるほどの場所だった。


聞くだけでは害しかないような森だが、この大森林には貴重な素材が豊富にそろっているのだ。各国はそのような資源を放っておくはずもなく、自国のものにしようと軍を派遣するのだが彼らが帰ることはなかった。


それ以来、この帰らずの大森林はどの国にも属することなく、魔物たちの住処となったのだった。


では、なぜ彼女がこの大森林を歩いているのかというと単純にサクラ王国への近道だからだ。ミラナリアが有する結界の力は何者からも彼女を守る鉄壁の盾である。


自身の周囲に結界を張って、結界と共に移動すれば問題なく帰らずの大森林を移動することができる。その証拠として、凶悪な魔物たちが彼女を襲おうとしてもすべてはじき返してしまうのだ。


「いや、マジで便利すぎるでしょ!こんな便利な力があるのならもっと早く逃げ出しとけよ、過去の私。これなら、この森の貴重な薬草とかを採取して商人ギルドとかに売り込めば一生安泰じゃん!」


そう、この世界では平民の人権がないメロロ王国を除いてすべての国に商人ギルドと呼ばれるギルドがある。商人ギルドとは国の垣根を超えた商人たちの集いで大抵の商人はこの組織に属しているのだ。


「あぁ、でも流石にどれが貴重な薬草なのか全く分からないわ、どれも雑草にしか見えないし。誰かにそういう情報を教えてもらわないといけないわね。こっちでも勉強しないといけないのか、はぁ~。」


異世界でも勉強に明け暮れる自分を想像し、ため息をつく彼女であったがどこからか怒号が聞こえてくる。


「うわ、ここって帰らずの大森林って言われてて、誰も入らないんじゃなかったの?まぁ、ガッツリ入っている私が言うのもなんだけど。」


怒号が響き渡っているのはちょうど進行方向の先だった。別に怒号が響き渡っているからと言って走り出して様子を見に行く彼女ではない。なぜなら、危険と承知でここに入ってきたのは自己責任であり、助ける義理などなかいからだ。


なにより、今のミラナリアに必要なのはこれから生活していくためのお金であり、ボランティアの人助けなどする気はなかった。まぁ、単に面倒臭いともいえる。


残念ながら、声の発生源は進行方向の先にあるため、ミラナリアはしばらく進むと声の主を見つけてしまう。


どうやらそこにいたのは、どこかの貴族のようだった。なぜ、彼女が貴族と判断したかというと一人だけ立派な服を着ており、それを守ろうとする複数の兵士たち。そんな彼らが魔物たちに襲われているのを見れば、馬鹿な貴族が後先を考えず森に入ってしまったことくらい容易に想像がつく。


ミラナリアはそんな彼らを見て、もちろん素通りするのであった。

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