現実ラブコメは甘くない！！

第19話 彼女からの話

「別に何もしてないんだけど」

「嘘つけ！　きっと人を惑わす催眠術を使ったに違いない！」

「そんなのあるなら教えて欲しいよ……」

　なんで俺がこんな目に……。

「とにかくなんか色々気にしてるみたいだけど、俺はそんな気全然無いから」

「だってよ吉田、良かったな」

「な、何がだよ！」

「だってずっと気にしてたじゃん、二人の関係について」

「あぁ、今日はずっと上の空だった」

「は、はぁ！？　んなわけねぇだろ！」

　取り巻き二人からからかわれ顔を赤くして否定する吉田。

　これで分かって貰えれば良いのだが。

　吉田達は話終えるとそのまま帰って行った。

　俺と井岡も少し遅れてその場を後にした。

「案の定というか、なんというか。やっぱり吉田って堅山に惚れてたんだな」

「まぁわかりやしね、本人も気が付いてたし」

「にしてもあの顔最高だったな！　どうやってあの堅山を？　って真剣な顔で聞いてきやがってよぉ！」

　井岡は先ほどの吉田の顔を思い出して大爆笑していた。

　まぁ、格下だと思っていた人間に好きな子を取られたらリア充達は催眠術も疑ってしまうんだな。

　まぁ確かにこの前の告白ドッキリの時の仕返しが出来たような気分にはなれたし、少し気持ちがすぅっとするのを感じた。

「さて、それじゃぁこれからどうする？　今日は俺バイトねーからよ」

「じゃぁなんか食っていこうぜ、なんだか今日は少し疲れた」

「まぁ一日中クラスの注目の的だったもんな。明日からもどうなるか楽しみだな」

「お前他人事だと思って楽しんでないか？」

「まぁな」

「おい」

　そんな話をしながら俺達は街を歩いていた。

　そんな時に俺のスマホが鳴って電話が掛かって来たことを知らせる。

「電話？　知らない番号だな」

「マジかよ、出ない方が良いんじゃないか？」

「いや、緊急だったらヤバイし、はいもしもし？」

　俺はスマホを操作して耳にあてて電話に出た。

『もしもし？　石嶋君？　今どこに居るの？』

「えっと？　あれ？　だ、誰？」

『あぁ、ごめんごめん。私よ、伊奈よ』

「か、堅山さん！？」

　電話の相手はなんと堅山さんだった。

　何故俺の番号をしっているんだ？

　教えてないし、そもそも教える気もなかったなのになんで？

『聞こえてる？　あのさ話したいことあるんだけど、今どこにいる？』

「え？　今は……」

　俺はニヤニヤ笑いながら隣で俺が困っている様子を楽しむ井岡に助けを求める。

　しかし奴はニヤニヤしているだけだった。

　こいつ、マジで楽しんでやがる……。

「ご、ごめん。今から友達と用事があるんだ、話なら明日学校で……」

「あぁ、悪い、急に用事入ったからやっぱり飯食いに行くのなしな」

「あ、お前！！」

　井岡は電話の向こうにも聞こえるような大声でそう言い、俺の方を見てニヤリと笑った。

　そして……。

「堅山が話があるってんだ、もしかしたらさっきの吉田のことかもしれねぇぞー」

『え？　もしかして吉田が何かした？』

「あ、いや別に何も……」

『そう？　それでどこに居るの？　私は今駅前にいるんだけど……』

「あぁ、俺は今……」

　ここでもう自宅付近だと言って誘いを断るか？

　しかし、そうすると家に来るなんて言いかねないしな……。

「えっとここは……」

「あ、居た！」

　俺が悩んでいると背後から何処かで聞いたような声が聞こえてきた。

　しかも俺のスマホからも同じ言葉聞こえてきた。

　その瞬間、俺はなんだか身体にびくっと緊張が走るのを感じた。

　恐る恐る振り返って見ると、そこには先ほどまで電話で話していたはずの堅山の姿があった。

「なんだ、石嶋君も駅前に居たんだ」

「あ……はい、居ました……」

　最悪だ。

　今日くらいは学校の外では解放されるかと思ったのに……まさかこんな事になるなんて……。

「お、じゃぁ俺はこの辺で」

　井岡は井岡で状況を見計らい、ニヤニヤしながらその場を後にしていった。

　あいつは一体何が目的なんだ？