第7話 彼女はヒロイン俺はモブ

 なんとか断らなくては……普通に一緒に帰る奴を待たせてるっていうか?

 実際そっちが先約だしなぁ……でもそれで三人で帰ろうとか言われたら井岡の奴が良い顔しないだろうし……うーん困った。


「なんで私とそんな帰りたくないのよ?」


「え!? いやそんなことは……」


 堅山さんの問いに咄嗟にそう行ってしまったが正直に言うと一緒になんて帰りたくない。

 だってドッキリとかじゃないとしても何を話せば良いか分からないし。

 もういっそ一緒に帰りたくないんだよ!

 とか言えたらどれだけ楽か……。


「じゃぁなんでそんな拒むのよ」


「いや、あの……だから……その……」


「……やっぱり……この間の事……怒ってるんでしょ……」


「え?」


 俺が悩んでいると堅山さんは急に元気の無い顔をしてそう言い始めた。

 まぁ、怒ってはいる。

 いい加減にしろとも思っている。

 でも、今更なんでそんな話を?


「悪かったと思ってる……みんな悪乗りしちゃってから……でも二回目の告白は本気だったから……でも皆が来ちゃってその……」


「え? え?」


 一体何を言っているのか俺は全く分からなかった。

 つまりどういう事だ?

 俺はどうしたら良いんだ?

 てかあの……またドッキリ?

 もう訳がわからん!!

 俺は情報が多すぎてまったく理解が出来ず混乱していた。

 すると、今度は堅山さんが泣き出してしまった。


「うっ……ごめん……」


「え!? あ、いやどうしたの? えっと……」


 あぁ、こう言う時あのカースト上位層の男子の方々はカッコ良くハンカチとか出すんだろうなぁ……生憎俺はいまそんな物持ってはない。

 流石にドッキリで涙まで見せることはしないだろうと俺は彼女の話を信じ始めていた。

 しかし、ここは昇降口。

 これではまるで俺が泣かせてみたいじゃないか……見てみろ、もう人が集まってきた。

 男衆に至っては俺に殺意を込めた視線を送ってきてるし。


「と、とにかく目立つから移動しよう!」


「う……うん……」


 俺はそう言って足早に堅山さんを連れて昇降口から出た。

 だってあの場に居たら明日から噂になりそうだったし……。

 そのまま俺たちは学校の裏手にある中庭のベンチにやって来た。

 放課後のため人は少なく、話をするにはうってつけだった。


「落ち着いた?」


「……うん」


「そ、そっか……」


 なんでこんな事に……俺が何をしたっていうんだ。

 気まずい空気が流れる中、俺は話を整理しようと頭の中で考えていた。

 彼女はこの前のドッキリの件で俺がまだ怒っていると思っている。

 もちろん俺は怒っている。

 しかし、彼女がいうには二回目は本気だった、でも皆が来ちゃってうんたらかんたら……。

 そして二回目の告白は本気だった……って……。

 え!?

 じゃぁなに?

 この子マジで俺に告白する気だったってこと!?

 それをあのカースト上位層の奴らに邪魔されて俺がまたドッキリだってって勘違いしたってこと?

 も、もしそうだったら……俺、告白された?

 

「………」


 ふと隣に座る堅山さんを見ると俺の征服の裾をぎゅっと握っていた。

 うん、可愛い。

 いや、違う!! 

 こ、これはきっと何かの間違いかまたドッキリだ!

 俺にこんなラブコメな展開はありえない!

 ありえたとしてももっと地味なモブ同士の恋愛みたいなはずだ!

 こんなヒロイン級の女の子に告白なんてされるはずない!


「ねぇ……」


「は、はい!!」


「……ちゃんと言っても良い? 私の気持ち……」


「え?」


 そ、それは改めて告白するってこと?

 なに顔を真っ赤にして顔反らしてんのこの子?

 メチャクチャ可愛いんだけど……って違う!

 騙されるな!

 きっとこれはドッキリだ!

 俺を騙す為に仕掛けられたドッキリだ!

 そうじゃないとこんな宝くじで一億当たる並の奇跡が起こるわけがない!

 でも……。


「……良い?」


 ぐはっ!

 顔真っ赤にして上目遣いでそんな事を聞かないでくれ!

 破壊力が凄すぎる!

 しかもまだ俺の制服握ってるし!!


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