【50万pvありがとう!】わたしは美味しいご飯が食べたいだけなのだっ!~調味料のない世界でサバイバル!無いなら私が作ります!聖女?勇者?ナニソレオイシイノ?~
第28話 年上をからかうものではありません!
第28話 年上をからかうものではありません!
「ケイ様ぁ……ぼくまだご褒美もらってないよお」
お昼を終えた休憩中。
私の隣に座るポールがうるうるとした瞳で懇願中。
「ぼく、頑張って三つもお風呂つくったよお?」
「うっ……その節はお世話になりました……」
三つ、の言葉にドキリと心臓が飛び跳ねる。
ルーをはじめ、他の三人が不思議そうに私とポールを見ている。
「……三つ?お風呂場は二つでは?」
「何で三つなんだ?」
「追加でなにか造られたのです?」
「う、うううあぁ……!!」
矢継ぎ早に三人に質問されて何と答えたらいいかあぐねいていれば、空気を読まない(読めない)ポールがにこにこと邪気のない笑顔でバラし……いや、言いやがった。
「なんかねえ、身の危険?を感じたからもう一個作ってー!ってケイ様が言うから造ったのお」
「身の危険……ですか?」
「やめて、ルー、事情は分かったみたいな顔しないで」
少しの情報で直ぐに何かを理解したルーは、私をみて今度はニヤリと笑った。
やめて、そんな顔しないで。
まだ分からないダンと、お察しとばかりに我関せずになったヤック。
ポールは当然分かってないので首を傾げてぽよぽよしてます。
「違うの!団長さんがね、大浴場は使いにくいだろうから、お願いして団長さん専用のを作って貰ったんだよ!それだけ!!」
「ああ、そういう事か。事情はわかったけど、何でケイ様そんな顔が赤くなってんだよ。風邪でも引いたのか?」
「ダン……そういう時は知らぬ存ぜぬが一番です」
「そうです。ルーの言う通りなのです」
ルーとヤックはダンの両脇に座っていたので、二人から肩を叩かれますます分からないと呟きながらもそれ以上は聞いてこない。助かった。
「でも、ケイ様お風呂の扱い方教えて差しあげたんでしょお?お優しいですう」
「あーーー!!ポール!ポール!!お菓子作りはじめようか!!」
「本当!?作るーー!!」
立ち上がって大声で宣言する。
ポールの爆弾発言を止めたつもりだけど、目の前の二人(ダン除く)はニンマリ顔。
あの日、結局私をからかったあと本当にお風呂が使いたい団長さんは大浴場に行ったのだけど騎士達がまだ居たため断念。
仕方なしに私の方へ、と進めたけど騎士の何某がーとか言い始めて……――それ言うならからかいはどうなのかと問いたい――まあ、結局は入られたのだけど、入り方が分からないと言うので説明。室内着の下のみを着込んで入浴。なんで知ってるか、って……だって、室内着の着方わからんっていうからさあ!!それも説明した訳!
貴族ーー!自分の事出来なさすぎーー!
知識としては室内着の存在を知ってるらしいけど、そうですよね、貴族が大衆浴場みたいなサウナ行かないですもんね!
そしたら下だけでいいです、なんて言ってたから!着替え中は見てないから!
浴室入って、これはこういう使い方、とかこれは異世界のシャンプーとリンスだとか、そういう説明をだな……した、だけです。
断じて一緒に入ってない!!!
……すみません、上半身は少し見えました。
説明終わるまで着ててね、て言ったから全部では無いけど。
室内着は半袖半ズボンのサラッとした生地でできてて、上は前開きの襟なしシャツ。
それをボタン止めずに着てるもんだから見えるよね??多分貴族ボタン止めれないんだなって察した。
不可抗力です、不可抗力!!
その後は団長さんだけ浴室に残して、わたしは脱衣場。初めての入浴で湯あたりしてはダメなので傍についてて、長湯はダメ、とか誰がどれを担当した、とかそういう説明をしつつ団長さんの初めてのお風呂を見守った……という訳。
で、その後にポールに泣きついたんだけどね。
マジで騎士の何某どこに行ったんだよ、て思う。しかもグイグイ来すぎてどう反応したらいいかわかんない!からかわれてるのは明らかにわかるけど!!
「ねえねえ、ケイ様ぁ。ふわふわの雲みたいなお菓子ってどんなのぉ?」
ポールのウキウキ声で現実に戻ってきました、ただいま。
「あ、えと……口の中でしゅわしゅわってするケーキだよ」
「しゅわしゅわあ!!?」
ますますテンションがあがるポール。
他の三人は興味無いのか今日のお手伝いは私とポールだけ。
まあ、ポールのご褒美だから来なかったってのもあるか。
とりあえず必要な材料を揃える。
牛乳、卵、薄力粉、砂糖、塩、バター、蜂蜜……これだけ。……あと、レモンも。
そしてこの日のために私が作った、リコッタチーズ。
リコッタチーズはチーズを作ったあとのホエーを煮込んで作る低脂肪のチーズだ。二度煮込むからリコッタ。実に簡単。
だけどわたしはホエーを作るのがめんどくさかったから、牛乳を塩とレモン汁を入れて煮詰め、布で漉したものを作っておいたのだ。その方が簡単だからね。
「じゃあ、ポールにはハニーコームバターを作ってもらいまーす」
「わかったあ!」
「私はその間に生地作るね」
ハニーコームバターとか大袈裟に名前ついてるけど、単にバターと蜂蜜を混ぜるだけ。
その間に卵黄と卵白に分けておいて、卵黄だけのボールに牛乳とリコッタチーズもどきを入れてさっくりまぜる。
そしたらポールが作業終わってるのでここからは一緒に。
「卵白にレモン汁を少し入れて混ぜる!」
「うわあ!すごいっ、どんどん泡立っていくよお!」
「これはメレンゲっていうやつ。本当は卵白凍らせるともっと早いんだけどね。レモン汁でもそれなりに早くできるから」
「あっという間にふわふわの雲になったあ」
まあ、これも化学の力なのですがね。
今日はそういうのを突っ込むルーやヤックがいないのでどういう仕組みでー、みたいな説明をしないからサクサク作業が進みます。
「次に卵黄の方に塩と薄力粉をいれる……けど、ザルで振るいながら入れたいからポールやって」
「はーい!」
「チーズが混ざらないように混ぜすぎないのがポイントだよ」
作り方を教えつつ、主導権は私だ。
これはポールのご褒美だからね。当の本人手伝ってくれてるけど。
あとはメレンゲを数回に分けてこれまた適当に混ぜます。
このリコッタチーズケーキ、ズボラに最適なんだよね。メレンゲさえなければ。
生地が出来たら熱したフライパンにバターを溶かしてじっくり弱火で両面焼けば完成。
人数分のお皿に二枚づつ、ポールだけ五枚載せてあげた。
「ほーい、出来たよー」
「え!?僕達の分もよろしいのですか?」
「マジかよ、ありがてえ!」
「それならお手伝いすれば良かったですー」
食堂に戻り、人数分のお皿を並べる私に申し訳無さそうにする三人だけど、二人だけ食べて三人除け者……なんていやだもん。それにお風呂手伝ってくれたのは三人もだからね。
「三人もお風呂手伝ってくれたから気にしないで食べて?」
そう言って、進めるとお礼を言う三人。どこまでも律儀。可愛すぎる……。
「じゃ、いただきます!」
「「「「いただきます!」」」」
この食事の挨拶も慣れて、今では五人でいただきます!をしている。
私がいないところでも率先して挨拶をしてるみたいで、時々真似した騎士達がいただきます!の挨拶をしてるのを見かけてはちょっとにやにやな私。
「んー!ふわふわ!本当にふわふわです!」
「おお、生地にチーズが入ってて甘くねえ!」
「その代わり上に塗ったバターが甘くて……これはなんなのです!?」
「あまじょっぱくて、ぼくの好みだあ」
「ふふ、今回はご褒美だからね!ポールの好きな味にしたよ!」
各々リコッタチーズケーキに夢中です。
生地自体は甘くないので、ハニーコームバターと蜂蜜をかけて食べる。これがまたあまじょっぱい味で罪な味なのだ。
フルーツを載せても美味しいけど、今回は生地のふわふわしゅわわっと言うのを楽しんで貰いたかったのであえてシンプルに。
「ねえ、ケイ様あ?」
「ん?なあに、ポール」
ポールがニコッと笑う。
「これ、絶対団長様も好きだよお。生地甘くないから」
「ぶはぁ!!」
突然の爆弾発言パート2。
びっくりしすぎて危うく口の中のものをはきだすところだったわ!
てか!!このぽよぽよ!!空気を読まないんじゃなくあえて読んでなかっただけかあ!!!!
わなわなと震えてポールを見つめる私の反応に三人がゲラゲラ笑う。
「ポール……もう本性を見せるのですか?」
「腹黒ポールが出たな」
「もう少し隠しておけば面白かったですのにー」
他の三人はポールのそういう性格を知ってたらしく(まあ幼なじみと同期の見習い組だからな!)、確信犯的なポールは我関せずを貫いております。
図太い!
「ケイ様は早く団長様に持っていくといいと思うのお」
「そうですね、ふわふわしてるうちに」
「上手いこと言いますね、ルー」
「まあ、熱いうちがいいからな」
「うぐっ……こ、この……年上をからかうものではありませーーーん!」
食堂に私の叫びがこだまする。
一枚上手の見習い組に、まんまとやられた私なのであった……。(ちなみにダンは始終分かってない)
……まあ、持っていくけどな!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます