夢判断
大地はいつも同じ場所の夢を見る。
大きな木造の長屋である。
東西に長細く二階部分は南面に部屋が並んでいる。
どの部屋も布団が敷いてあったり、散らかって見知らぬ人がゴロゴロしている。
窓から日が差し込んで、みんな居心地がよさそうだ。
一階部分はあまり行くことはないが、暗くてあまり居心地が良くない。共同のトイレや台所、浴室などがある。夢の終わりは、いつも一階で気を失って目が覚める。
なぜいつも同じ長屋の夢なのか。
恐らく彼の願望が形を変えて表れているのかもしれない。
ある日仕事で、行ったことのない岡山へ行った時、あの長屋を発見した。
実家に帰った時、母親に岡山のことを聞いてみた。
母親の青色が一気に青ざめた。
「あなたが、まだ4歳の頃、岡山のマンションに住んでいたの。近くの長屋に、仲の良いお友達がいて、よく遊びにいっていた。大地には楽しかった長屋の記憶が焼き付いていたのね。」
大地には、母親が何か隠し事をしているのが分かった。
しかし、これ以上聞いても、何も話さないだろう。
図書館で大地が4歳の時の岡山の事件を調べることにした。
25年前の2月10日、長屋の住民から男が包丁を振り回していると通報があった。
男は警官の制止を無視して襲い掛かってきたので射殺された。
被害者は三人。
4歳の子供二人の内、一人が重体、もう一人が死亡した。
母親は即死だった。
それ以上の続報等の情報は、見つけることができなかった。
やはり直接、母親に聞くしかない。
「母さん、この殺人事件の時、僕はどこにいたの?」
母親は観念して話し始めた。
「実は、この死んだ子供のほうが、私の子供だったの。」
「ということは、やっぱり僕は生き残ったほうの子供で、母さんの本当の子供じゃないんだね。」
「ちがうわ。あなたは、本当の私の子供。死んだほうよ。」
「えっ。でも僕は今、生きてるよ?」
そう言って、自分の手を見た。
みるみる透明に変わって見えなくなった。
あの事件から一週間後、あなたが突然帰ってきたの。
自分が死んでいることに気づかずに。
でも、ついに気付いちゃったのね。。。さようなら。
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