出会いと別れ

天界では下界のように、たとえば3月で辞める、4月から入社する、などといった通例はなく、退神な入神のタイミングは存在しない。毎日のように退神、入神が発生する。




今日も誰かが退神するようだ。




あの神は確か神村さんだっけか。


あまり話したことがないのでよく分からないが、上からも下からも慕われていたと聞く。飲むことが好きで、天界にある飲み屋はほとんど通ったんだとか。あ、一度誘われたことがあったんだっけ? その時は残業で行けずに断ったけど。




どえらい量の花束を貰っているあたり、かなり慕われていたのだろう。俺が退神する時もあんな感じなのだろうか? いや、俺は情に流されない冷たい奴だし、愛想良くも出来ないからないだろうな。




退神する神もあれば入神してくる神もいる。




今日は神専門学校を卒業したばかりの若手が入ってくるという。天界では若手の指導も大切な仕事の一つ。若手を育てていくことに重きを置いているためか、特に若手のミスに関しては厳しく、指導を担当する神の責任となる。時には責任を取って下界に落とされることもあるそうだ。




正直に言えば、俺は指導が苦手だ。愛想良く出来ないし、何より指示を出すのが苦手でならない。放任主義でやりやすい、と言ってくれる若手もいるが、基本的に若手からは好かれない。そのため、若手指導に俺が入ることは滅多にない。責任を取りたくない俺からしても好都合だ。




「ちょっとみんな集まってくれ。新しい若手を紹介する」




神谷チーフが呼んでいる。どんな奴が来たのか楽しみだ。




「今日から入神する神楽くんだ。初めてで分からないこともいろいろあるだろうから、気にかけてやってくれ」




「今日から入神しました、神楽です。天界に少しでも貢献できるように頑張ります、よろしくお願いします」




なにやら真面目そうなやつが入ってきたな。情に流されなければ良いが、まぁ数ヶ月もしたら慣れてくるだろう。




「指導は、そうだな……。神山、お前に頼む」




……俺?

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