神様のお仕事

神様には数多の種類が存在する。唯一神だとか、あるいは火の神だとか水の神だとか。とりわけ、日本という国には八百万の神がいるという。


それとは別に、下界に最も近しい神が存在する。それが「区域担当神」だ。世界各国、それぞれの区域に割り振られた神様がいる。日本でいえば、都道府県市町村別それぞれに神様が割り振られている。これは、勤続年数や地位によって任せられる場所が決まる。下界でいうところの「部長クラス」なら、東京の渋谷だったり大阪の難波だったり、反対に「1〜2年目」なら地方の比較的人口が少ないところなどが割り当てられる。


では、この「区域担当神」は、割り当てられた地域で何をしているのか。まず日常業務では、担当区域の天候を決めたり、担当地域に住む人それぞれの「運勢」を決めたりしている。天候は地球の自転や公転、太陽との位置などで決まっていないし、運勢も普段の行いや偶然などで決まっていない。全ては「神様」が決めているのだ。


神様が業務を行うに当たって最も重要視されるのが、神としての信頼を構築すること、そして業務に「情を入れてはならないこと」である。


下界の人間が事あるごとに「神頼み」をするように、神様は崇められる存在でなければならない。さらに、天界での業務は、降らせる雨の量や下界の生き物に与える運の量などを区域ごとに調整したり、担当区域の下階の様子を逐次報告し合ったりと、神様同士の「阿吽の呼吸」で成り立っている部分もある。故に、下界とはもちろん、天界においても神としての信頼を構築することは重要となる。


また、この区域は最近雨が少なく苦しんでいるからそろそろ雨を降らせてあげようとか、この人は良い人だから運勢を良くしてあげようなどと、業務において情を入れてはならない。なぜなら運命は成り行きでなければならないからである。神様が雨を降らせたいなら降らせるし、運を上げたり下げたりしたいなら随時行うし、そこには善意も悪意も、また情が入ったりもしない。このように、神様の業務は「気まぐれ」であり、あくまで成り行きである。だから、毎年のように大雨や干ばつに苦しむ区域が出てくるし、病気に病気が重なってしまう人もいる。「神様は乗り越えられる試練しか与えない」のではない。「乗り越えられない試練も普通に与える」のが神様なのだ。


そして「区域担当神」の一番重要な業務。それは担当区域に住む人に「天罰を下すこと」である。当然、この「天罰を下すこと」に関してももちろん、情を入れてはいけない。裁判においてもそうであるように、裁判官は情に流されず、公平な判決を下さなければならない。いわば神様は天界の裁判官のようなものであり、神様が下した結論が、下界での結論に直結するようになっている。つまり、下界の裁判においては最終的に裁判官が判決を下しているように見えるが、実際には「神様が下した結論」を裁判官が代弁しているに過ぎないのだ。

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