白鳥飛来

オダ 暁

白鳥飛来

空を駆け抜ける甲高い声

見上げれば

白鳥がV字になって

飛んでいる

陸を渡り海を越え

シベリアから

ようようこの地に

辿り着いたのだ


先頭の白鳥が叫ぶ

「みんな、がんばれ もうそろそろだぞ」

あとに続く白鳥たち

「ああ、やっと着いた 長い旅だったなあ うれしいなあ」

なんて言ってるのかしら

そんなことを想っていたら

白鳥たちの姿は

いつのまにか豆粒のようになり

灰白色の空のかなたに

消えてしまった


わたしは再び歩き出す

雪でぬかるんだ道を

凍えそうな心を抱えて

このまま

どこかへ

飛んでいこうか

背中に羽は無いけれど

心の翼さえあれば

きっと・・・・・・


白鳥はこの地で憩い

春になると

シベリアに帰っていく

その日 空は

長旅に向けて出発する

幾つものV字が

流れ星のように

現れては消えていくのだろう


おまえたちに又会う

その時まで 私も

心の旅路をかきわけて行くから

そして

越冬地をきっと捜してみせよう

白鳥の去った空の向こうに

私は小さく

つぶやいた

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