年明け

年が明け1470年になった。

京都では現在進行形で1467年から始まった応仁の乱が続いていて、関東では享徳の乱がすでに15年目に突入している。


年明け早々、一門衆と家臣が集まり、年末に完成した清酒を飲み切るのではないかと心配になるくらいの大宴会が始まり、それが終わったと思ったら道真、景信の爺バカ2人組がやって来る。

恐らく後数年はこのパターンが続くんだろうな…。

ネット情報では3年後に長尾景信が五十子陣いかっこのじん(埼玉県本庄市)で死去するはずだから、今年を入れて後3回、そう考えると好意的に接してくれている景信に爺孝行をしてあげたくもなる。

来るたびに美味しいものを食べさせてあげよう。


そして新年の来客が落ち着くと、大泉の開拓と専業兵士の雇用の為に石神井城と大泉へ毎日のように行ったり来たりの日々が始まる。


昨年の内に父である泰経に許可を取り、白子朝信を与力とし、朝信には農業改革の責任者として大泉を始めとした豊嶋家の直轄領の農業指導をしてもらい、白子家から新たに俺の直臣となった武石信康、馬淵家定の2人を兵士育成にあたって貰う。

勿論、2人には育成だけでなく、合戦の際には自分達が育てた兵士を指揮して貰う事になる。

そして風間元重率いる風魔衆は乱波働き組、情報収集組に分かれて体制を整えつつある。

旧領からも人が来て老若男女総勢300人ぐらいになったうえ、江戸の商人を通じて口減らしや合戦で奴隷となり売られた人を買い取ってその人達の振り分けを元重に任せたら結構良い感じになった。

現在は風魔衆は乱波働き組150人、情報収集組80人となっている。


それにしても元重は奴隷の中に居た、鍛冶師だったり、元商人、職人だった人などを適材適所に振り分けてくれたのでそこそこ人手不足が解消されてきた。

子供でも10歳ぐらいで器用な子供は鍛冶師や職人に弟子入りさせる事で将来的な人材確保もちゃんと考えてくれていたし。


良い買い物をした…。

人の売り買いを良い買い物と言って良いのかは疑問だけど、この時代では普通の事なので俺自身も妙な感覚ではあるが、大泉に来たら働けば金を貰えるし食べ物も普通に食べれる、何より奴隷として扱わないで領民として扱っているので売られて来た人達もむしろ喜んでいるから良いと思うことにしよう。


そして喜ばしい事に3人の鍛冶師に設計図を渡して1年、やっと火縄銃が完成した!

設計図の段階で口径を統一する事などの要求があった為に手間取ったようだが、2丁が完成し試し撃ちも完了した。

現在、大泉には鍛冶師が野鍛冶を含め37人居るが去年は農具を大量に作り続けていた為、野鍛冶の人もかなり腕が上がっているとの報告を受けている。

まあ今年も農機具作りに関しては今年も作り続けて貰う事にはなるけど、現在鉄砲を作っている鍛冶師3名の他に新たに3人を加え今年は6人態勢で鉄砲を作って貰う。

鉄砲担当の鍛冶師が言うには今年中に20丁の完成を目指すそうだ。

これからも鍛冶師を集め、また育成し豊嶋領に鉄砲鍛冶の村を作ろう。

豊嶋領では鍛冶師の羽振りが良いという事でポツポツ鍛冶師が集まって来ているから一大生産地にするのも夢では無いと思う。


鉄砲の目途が付いたので後は硝石作りだが、これは悩んだ。

作り方が外に漏れないようにしたい所ではあるけど豊嶋領には人里離れた深い山が無い!

恐らく鉄砲は俺が合戦に使うまでは広まらないとは思うが、一度合戦での有効性が証明されれば国人衆達は鉄砲を手に入れようとするはずだしそうなれば火薬の材料である硝石作りの製法も調べようとするはずだ。

どうやって秘匿するか…。

うん、風間元重が率いる風魔衆の村で生産させよう。

今使う分は古土法で十分だけど、これから大量消費するはずだから硝石丘法を教えて風魔衆に生産を任せることにした。

現在、試行錯誤中のシイタケ栽培も風魔衆に任せているから過剰に仕事を任せる事になるけど、なんせ信頼できて大勢の配下を持つ家臣が居ないんだからしょうがない!

という事で元重に任せたけど、嫌な顔をせず引き受けてくれた。

どうやら火薬の材料という事で乱波働きにも使えるとの事で張り切っているようだったが、成果が出るのは2~3年後なんだよね…。


後は専業兵士だけど、これは大泉の農家の3男、4男ではなく人買いから買い取った人の中で足軽になっても良いと言う人と豊嶋家の直臣で身分の低い家に触れを出しの3男、4男で家を継げない者を集めた。

効果は抜群で300人近く集まってしまったので、その中で15歳以上を雇用し、15歳未満は15歳になったら雇用する事にした。

その結果、専業兵士として200人程を採用し、これから武石信康、馬淵家定に訓練をして貰う。

訓練内容は身分や家柄に関係なく馬術、刀や槍、弓などの個人技だけでなく集団戦として長柄の訓練、そして開拓の手伝いだ。

どうしても開拓は肉体労働だから、食生活を改善すれば筋力アップにもつながり開拓も進むので一石二鳥だ。

勿論、足軽衆として年1貫文、米に換算したら2石の俸給を出すし宿舎を作っているので朝昼晩飯付きだから待遇としては確実に好待遇なはずだ。

と言うか男どもだけだと食事がろくなものにならなさそうだったので朝食と夕食も付けたんだけど、人数が増えて足軽長屋とかが出来たら昼だけ支給して、朝と夜は外食をさせるようにしよう。

その為には飲食店を作らないといけないな…。


これは商機!

飲食店と娼館を足軽長屋の近くに作り俺が元締めになれば足軽に与えた俸給が利益となって帰って来る。

その為には大泉を開拓しまくらないと。

金なら販売品に清酒が加わった事で今まで以上に手に入っているし、人を買いまくって開拓しまくろう!


その為には、石神井川の上流の武蔵関にある富士見池から大泉まで水を引かないと。

途中台地があるから鍛冶師に大型手押しポンプを作らせて水車と組み合わせ水力を使って台地に水をくみ上げて大泉まで水を引く事になるだろうけど、成功すれば今はほぼ雑木林の石神井城から大泉までの台地が農地にもなるし、町を作る事も出来るはずだ。


今年は忙しい1年になりそうだ。

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