番外編 とある街のトラブル3




「あれはファイヤドラゴン!見つけたわよ!」


ナタリーは、広場に着くと目に入ったドラゴンに斬りかかった。

ドラゴンは攻撃を受けた部分を痛そうに舐めている。


「ナタリーさん!」


ファイヤドラゴンのランクはBランク下位である。

Bランク冒険者であるナタリーさんならたしかに単独で倒せる相手だ。

相手がファイヤドラゴンならだが……

ナタリーさんは、目の前に敵がいるというのに傷口を舐めているファイヤドラゴンに舐められていると思ったのか、額に血管を見せる。


「舐めるな!クリスタルアース!」


ナタリーさんのスキルによる攻撃、クリスタルアースは地中から透明な鉱石を出して、対象を推しつぶすというかなりの強技だ。

しかし、ドラゴンはそれらの鉱石を体当たりで破壊した。


「そ、そんなはず……」


ドラゴンはそのままの勢いでナタリーに突っ込んでいった。

ナタリーは、剣技で相殺しようとした。これも本来なら正しい考えだ。

だが、ナタリーの予想を裏切ってドラゴンの突進は止められず、大ダメージを受けてしまう。


「ガッ……ハ」


こんなに一方的にやられるのは流石におかしいとナタリーは気付いたのか、ドラゴンを見直す。


「……私の技を受けて…ここまでの威力の突進………!まさかお前はフレイムドラゴンか!?」


そう。見た目が良く似ているから間違えたが、ここに来ていたドラゴンはファイヤドラゴンではなく、フレイムドラゴンだったのだ。

フレイムドラゴンは、ファイヤドラゴンの進化した形態だ。

そのランクは実にAランク上位に位置する。

更に、フレイムドラゴンは喋ることは出来ないが、魔物にしては中々の知恵がある。

コイツを倒すのはAランク冒険者でも至難という事だ。


「……冷静な判断力を失った私の敗北ということか。………殺せっ」


ナタリーは完全に勝ち目は無いと理解した様だ。

本来なら勝てなくても、少しでも多くの時間を稼いで住人が逃げられる様にしただろう。

しかし、残りの体力も少なく、足も折れた今時間など稼げない。

せめて最後くらい楽にいかせてほしいという思いで放った言葉だったのだ。

その言葉に反応してか、フレイムドラゴンは口から青い炎を出してナタリーに吹きかけた。


(……今私もそちらに行くぞ。我が弟ガルド!)


覚悟を決めて目を瞑る。

あぁ……もっと生きたかったな……………




………………?


おかしい。ナタリーにいつまで経っても炎が届かない。

疑問に思い目を開けるとそこにはケインが立っていた。どうやらケインがナタリーを庇っているからかダメージが無いらしい。


「ちょっと!僕のこと忘れないで下さいよ!」


「!?……き、君はさっきの……早く離れるんだ!コイツはAランクのフレイムドラゴンだ!私でも勝てない……はやく……早く遠くへ!」


「大丈夫ですナタリーさん。僕が倒しますから」


「何を言って…」


瞬間、ケインは物凄い速度でドラゴンの元へ向かう。


(速い!私でも目に追えない……)


フレイムドラゴンはギリギリ見えてはいたが、それでも見えていただけだ。

その圧倒的な速度に翻弄されて、思う様に動けず……首を切られた。


「ごめんな。……でもお前が暴れるから悪いんだぞ?」


フレイムドラゴンは、死んだ。

小柄な少女に屈服の姿勢をとったまま……





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