第104話 助けられる人
取調べが終わって1週間が経った。クウガさんからはあまり外には出ない方がいいと言われていたが、そろそろ鈍った体を動かして魔王討伐に行きたい。
ポーションも買わなくてはいけないし、何より宿の飯だけでは飽きてしまう。
久しぶりに街に出て食材を買う。
野菜やら肉やらを買って、今日はパンとシチューにしようかと思っていたら後ろから声が聞こえてくる。
「なぁ、見ろよ。あいつ勇者パーティーにいるケインに似てね?」
「いや、あんな美人じゃないだろ。それに勇者パーティーって今豚箱に入ってんだろ?」
「そうだな、まったく勇者パーティーが聞いて呆れるぜ」
どうやら、本当に勇者パーティーの評判は地に落合ようだ。
よく聞いてみると周りの人々の会話には勇者パーティーについての話が時々出てくる。しかもその全てが悪い話だ。
なんとなく寄ってみた本屋には新聞が置いてあった。立ち読みするとやはりこれにも勇者パーティーの悪事というタイトルで作られた記事が一面にある。
内容は、勇者は偽物?だの裏で魔王と繋がっている?だの、まぁ有る事無い事言ってくれている。
「勇者パーティーが旅に出て一年半が過ぎた。一体いつになったら魔王討伐をしてくれるのだろうか……か、言えてるなぁ」
僕は宿に戻ってクリフとエレナと話し合う。
「なぁ……何が間違いだったと思う?」
「それは……街の女の子が危ないかもしれないと分かっていたのに、自分達のことを優先してしまったらでしょうか?」
「結局のところ……女の子1人救えない僕達に、世界を救うなんて無理だったんだ」
「まさか!諦めるのですか!?」
「いや、そんな事はしないよ。ただ、手の届く子くらいは救ってあげないか?」
「……と言うと?」
「奴隷商に捕まった女の子はみんな帰ってきたわけではない。向こうも商売だから数千万程出せってさ」
「な!そんな馬鹿な話がありますか!そもそも奴隷は基本的に犯罪者がなるものでしょ?なんの罪もない少女達が奴隷商に売られてもそれこそ犯罪じゃ」
「それが連中小狡い事だけは得意でな、リヒトのクズが誘った女の子に脅迫して無理やり犯罪をさせたんだと。強盗とか暴行とか。普通それくらいなら奴隷にはならないんだけど、女の子に強盗や暴行された人もグルで警察に奴隷申請してたんだ」
「そ、そんな分かりきった茶番に付き合うのですか!?」
「でも証拠もない以上警察は捕まえれないし、法外な奴隷価格にも文句を言えないらしい」
「じゃあ攫われた女の子達は今も……」
「ああ、貴族に遊ばれてるんだろうな」
「……殺しに行きますか?」
「待て待て、一応貴族は悪い事してない。法律に則った事をしているからな」
「じゃあどうします?」
「全員買い戻すんだよ。金はあるだろ?」
僕の手持ちは金貨4000枚と少し。これは平民が死ぬまでに稼ぐ額を少し上回るくらいだ。
奴隷商は女の子1人あたりに金貨1000枚近く要求しているらしい。
攫われた女の子のうち帰ってきていないのは7人。
僕1人じゃ買い戻せない。
「別にエレナとクリフが手伝う必要はないよ。そもそも元を辿れば悪いのはリヒトだ。でも僕は元同じパーティーだったのに止めなかった責任もあるかもしれないと思ってるんだ」
「はぁ……ケインさん1人にそんな大金払わせるわけないでしょう私も出しますよ」
「僕も出します。ケインさん、1人であまり抱え込み過ぎないでください」
「2人とも……。よし!そうと決まれば買い戻しに行こうか!」
僕達は約半月程と金貨7000枚をかけてようやく女の子達を家に返してあげられた。
家族の人達の反応はそれぞれ違った。
あんたらのせいで!と涙ながらに怒る人もいれば、
助けて頂きありがとうございます!と涙ながらに感謝する人もいた。
でも共通していたのは全員が泣いていた事だった。
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