第4話

 (※デイヴィス殿下視点)


 陛下が、施設の整った病院へ運ばれて行った。

 一か月ほど戻らないそうだが、私にとっては充分な時間だ。

 そう、あの悪女を追放するのには、充分な時間である。


 まずは奴を捕えて、国民中の前に晒そう。

 そして、皆に嘘をついていたことを認めさせ、謝罪させる。

 そのうえで、許すことなく、奴を追放してやる。


 いったい、あの悪女はどんな反応をするだろう。

 いつまでも嘘をついていたという罪を認めず、強情な態度を取るだろうか。

 それとも、涙ながらに許しを乞うだろうか。

 まあ、どちらにしても追放することに変わりはない。

 どうせなら、無様に許しを乞う姿を見たいものだ。


 あの悪女を捕えるよう、既に兵たちに命令を下している。

 奴を捕えるのも、時間の問題だ。

 

 さて、再び追放されると言われたらあの悪女は、いったいどんな反応をするだろうか。

 今からそれが楽しみだった……。


     *


「おそらく、あの悪女はこの部屋にいる。兵の数も充分に揃った。周りを囲んでいるから、逃げ場はない」


 なんだか部屋の外は、物々しい雰囲気になっている。

 今にも突入してきそうだった。

 逃げ場はなさそうだし、どこかに隠れないと……。


 えっと……、どこに隠れようかな。

 ベッドの下とか?

 いや、ベタすぎるか。

 あ、湯船の中とかは、案外いけるかも。

 いや、それとも……。

 うーん、どうしよう。

 隠れる場所の候補はいくらでもあるけれど、どこもすぐに見つかってしまうのではないかという不安が付きまとう。


 いや、迷っている時間はもうない。

 私は隠れる場所を決めた。

 そして、すぐにそこに隠れた。

 私はそこで、息をひそめて外の様子をうかがっていた。


 数十秒後、何人もの兵が部屋中に入ってきた。

 足音でそのことが分かる。

 私は物音を出さないように、必死で我慢した。


「どこにいるんだ! この部屋にいるのはわかっているんだぞ!」


「くそっ! 手間取らせやがって! おい、手分けしてあの悪女を探すぞ!」


 どうやら、兵たちは隠れた私を捜しているみたいだ。

 ベッドをひっくり返す音が聞こえたり、湯船のふたを開ける音が聞こえてきた。

 私は自分の居場所がバレないか心配で、びくびくしていた。


「いないな。もしかしたら、おれたちが捜していることを察知して、既に逃げているのかもしれない」


「確かにこれだけ探して見つからないとなると、その可能性は高いな。おい、何している?」


「いや、この鍋の中を確認しようと思って……」


「おいおい、冗談だろう。そんな鍋の中に隠れようなんて考える馬鹿が、どこにいるんだ?」


「それもそうだな。ほかの場所を探すか」


 足音が遠ざかった。

 兵たちが部屋から出て行ったようだ。

 私は大きく息を吐いた。


 馬鹿で悪かったですね。

 まさにその馬鹿が、鍋の中に隠れているのですよ……。

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