終わりの時を貴方と一緒に
ゆりえる
第1話
地球の近くを飛び交う小惑星や隕石は数多に有るが、そのいくつかは不運にも、地球上に大きな被害をもたらした。
6600万年前の白亜紀にメキシコのユカタン半島に衝突した小惑星により、300メートルのほどの高さの津波や山火事が発生し、大量の硫黄が放出された。それは、太陽を覆い隠し、地球を寒冷化へと導いた。その影響で恐竜を含む当時の地球上の生物の75%が絶滅した。
更に遡る事、32億6,000万年前の南アフリカに衝突した隕石は、直径50kmという巨大なものだった。その衝突により、海を沸騰させ、空を赤く焦がし、30分にわたって地球全体に地震を起こし、高さ数千メートルの津波が海洋全体に広がった。その巨大隕石の衝突により、現在の地形になったと言われている。
この防御の術のない宇宙からの飛来物に対し、人間を含めた地上の生き物達は、あまりに矮小で無力過ぎた。
そして4月某日、再び32億年前の悲劇に匹敵するほどの小惑星が、チリ沖に衝突した。
その衝撃による大津波で、南米はほぼ水没し、アフリカや中米、オセアニアに大津波が迫っていた。
日本への予想到達時刻は、10時間後とされている。
約10時間後には、日本列島も海に飲み込まれる脅威により、会社や店からは人が消えた。
薬物を使用し、現実逃避しハイになる人々、自暴自棄になり自殺する人々や窃盗や殺人に走る犯罪者が瞬く間に激増し、日本と思えないほど治安が悪化した状態に、警察も八方塞がりになった。
若者達の多くは、残された時間だけでも、良い思い出を作りたいと願っていた。
普段はシャイな性格の者達ですら、積極的に告白する事が、ここ数時間のトレンドとなり、どこもかしこも、にわかカップルで埋め尽くされていた。
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