第60話嫌な予感しかしない
ですが、前世でも少年漫画などでは『昨日の敵は今日の友』など良く表現されますし、それに殿方という生き物はいくつになっても少年であるという事も理解しているので、きっとそういう事なのだろう。
父上もウィリアムも頭の中は少年であった。
ただそれだけである。
わたくしが眠っている間にどんな会話をしていたのかは分からないのだが、きっと趣味か何かの話で意気投合したのだろう。
殿方という生き物はそういうものだ。
しかしながら、こうもお父様とウィリアムが意気投合してしまっては、ウィリアムの立場は親公認という事になる事は必然であり、ただでさえ纏わりつかれてプライベートな時間など学園では無いに等しいのだが、下手をすれば実家さえもわたくしのプライベートな時間は無くなってしまうかもしれない。
そう思うだけでわたくしのストレスは鰻登りで上昇していく。
「あぁ、やっと起きたかね」
「すみませんお父様。 途中で寝てしまっていましたわ」
「いや、お前の体調も考えずに話していたのはお父さんの方だからな。 お前が謝る必要はないよ」
そう言うお父様は満面の笑みでわたくしの方へ近寄ってくる。
ただただ嫌な予感しかしない。
こういう時の殿方は決まって碌なことを言わないと相場は決まっている。
「ウィリアム君についてだが、話してみれば実に誠実で真面目な子ではないか。 ペイジ家の家督も継がないとの事だし、半ば縁を切られている状態らしいから近いうちにゴールド家が養子として引き取ろうと思うのだけれどどうかな? マリーの騎士でもあるのだからそちらの方が何かと都合がいいと思うのだが?」
そして、こんな時に限って女の勘という物は高確率で当たるのである。
あぁ、ウィリアムが我がゴールド家の養子になる。 その事を想像するだけで頭痛がしてきますわ。
「べ、別にわざわざ養子にする必要はございませんわ。 わたくしは今のままで十分ですの。 それにペイジ家は伯爵家であり、それもその家の長男でもございます。 その長男であるウィリアムを公爵家である我が家が養子として迎え入れたとなればどんな噂が立つか分かったものではございませんし、ゴールド家にとって不利益しかないと思いますわ」
しかしながら、当然わたくしも二つ返事で了承する訳にもいかず、お父様へ異を唱える。
当然涙をためた上目遣いに、自分でも年齢を考えろと思いたくなるような甘えた猫なで声で。
背に腹は代えられないので使えるものは全て使わせてもらう。
それが例え、お父様の後ろで必死に笑いをこらえているウィリアムの姿があろうとも、だ。
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