第50話出た答えは『平和』である
たかが芋でこれ程までのクオリティーなのだ。
その他の料理に対しても自然と期待感が高まって行くと同時にいままでこれ程の物を今までの見逃していたという事実に美食家としての自信を失ってしまいそうになる。
その失いかけたプライドを修復する為にも、ここタリム領の料理を余すことなく
一品残らず食べ尽くして見せようと強く思うのであった。
◆
私がこのタリム領でまずやろうとしたことは銀行を作る事と、食文化の向上、この二つである。
その他は後回しにしてでもこの二つに関しては急ピッチで取り組んできていた。
その為食に関してはお米こそまだ出来ていなものの、以前のタリム領と比べれば雲泥の差であるだろう。
まず手始めとして元からある小麦粉で作れる粉物、お好み焼きから始まりうどん等々。
そして痩せた土地でも栽培できる蕎麦を使ったそば。
同じく比較的簡単に育てる事が出来る【ママゾン】で購入した種芋で育てた様々な品種のサツマイモでシンプルに石焼き芋からスイートポテトまで。
味噌に醤油に関しては一年目から【ググレカス】を使い作り方を、麹菌などは【ママゾン】で購入して既に一年目から作り始めていたりする。
それらとそれと同じく、日本酒、みりん、豆腐などなどの制作も手掛け、最早この地は海外にある日本人街くらいには日本食で溢れ始めていた。
「なぁ、銀行を作るのは王国中の金貨を集めて権力をタリム領に集中させるという事から真っ先に手掛ける意味は分かるのだが、食に関しては別に後から改善しても良いのではないか?」
「あら? ブレット君ともあろうお方がそんな事も分からないなんて、まだまだお子様なのね」
そんな時ブレットが『食に関しては後回しにしても良いのではないか』などと聞いて来るではないか。
「そうは言われてもな……」
「そんなブレット君にクイズですわっ!」
「ど、どうしたいきなり?」
「ここタリム領と言えば何でしょうか?」
「…………………………………………平和な事?」
そんなブレットに私は唐突にクイズをはじめ、ブレットは訝しげながらも真面目に考え、答えを出そうとするのだが結局何も見つからなかったのだろう。
出た答えは『平和』である。
これはとても素晴らしい事と言えよう。
だけれども、言い換えれば『何もない』と同義である。
「そうですわ。 林業が盛んなわけでも、鉱山があるわけでも、港があるわけでも、特産品があるわけでも、観光スポットがあるわけでも無いここタリム領でございますればどの様にして人を集め、そしてお金を集める事が出来ますでしょうか? 先に街を発展させてもそこに住む人がいなければゴーストタウンとなりますし、銀行をつくっても町にお金が集まる仕組みが無ければ宝の持ち腐れでございますわ」
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