第206話 見えない力
そう言うと、彼女は緊張感のかけらもない声音でそう話すではないか。
それはまるで、我々を調べた上で彼女一人で対処できると判断という事でもあるのだろう。
国王陛下の前でここまでコケにされてしまっては我々もこの女を逃す訳にはいかなくなった。
捕まえて、この世で想像しうる一番惨たらしい方法で殺してやらなくてはコチラの気も済まない上に国王陛下に見せる顔も無い。
「あ、もし国王陛下とかいう人が我らがご主人様に隷属するというのであれば、今回帝国を乗っ取る為に水面化で動いている事と、後はそうっすね……帝国に麻薬を横流しして密売している事とか、人攫いをして王国の奴隷として売り飛ばしている事とか、その他諸々全てを許して見なかった事にしても良いっすよ? あ、でも国王陛下が隷属を望もうが、望まなくても関係なく違法に奪った奴隷達は皆我々が救い出すっすから、そこは覚悟しておくっすよ? ぶっちゃけ違法奴隷に関しては我らがブラックローズのメンバー達全員かなりご立腹っすから、下手したら一日で王国が地図から無くなるかもっすね。 あ、一応忠告はしたっすよ」
「ふ」
「ふ?」
「巫山戯た事を抜かしやがってっ!! もう我慢ならんっ!! 言うにことかいて国王陛下に対して奴隷になれだとっ!? ここまで我々を、そして国王陛下を馬鹿にされては生かしてはおけぬっ!!」
もう、こいつはどんな理由があれ生かしておくなどできようはずがない。 この俺の手で直接息の根を止めなければきっと一生後悔するだろう。
そしてこの女には、この俺を怒らせた事を後悔させてやる。
「あっそ」
「このクソガキ、どこまで我々をコケにするつもりだっ!! たとえ謝罪したとしても許さないからなっ!! 水のまじゅつ──」
「闇の魔術段位六【重力増加】」
「──あがっ!?」
そして俺は怒りのまま得意かつ派生の早い魔術を行使しようとしたその時、俺よりも彼女の方が魔術を行使するのが早かったらしい。
俺は自らが詠唱しかけている魔術を行使する前になんらかの見えない力によって地面に押し潰されしまう。
しかもその見えない力はなおも俺を押し付け続け、立ち上がる事もできないどころか息を吸うのもままならない。
しかしながら俺がこんな状態であるというのに誰一人として救出しようと動き出そうとしないのは何故だ? 普通ならば俺が潰された瞬間に周囲に控えている手練れ達が彼女へ追撃するものであろう。
その原因を知るために俺は見えない力で押し潰されそうなのを耐えながらなんとか身体を膝立ちさせて周囲を確認すると、俺以外の奴らも同じように見えない力で押し潰されているのが目に入ってくる。
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