第195話 所有物であり道具でもある

 そして初めは明かり程度から、後々は蒸気機関で動いていた物、例えば機関車等を電気へと動力を変えて行くのだと言うではないか。


 勿論電気以外のエネルギーも考えているらしいのだが、とりあえず主流になるエネルギーは電気に置き換えて行くとの事で、そのために私の頭脳が必要だと仰っていただけた時はまさに天にも昇るような気分であった。


 しかしながら間違いなくカイザル様お一人でお考え出来るはずであるにも関わらず、私に美味しいところを任せて手柄を譲ってくれる事がどれほど勿体無い事なのか、カイザル様自身が凄すぎて恐らく気づいていない可能性すらある。


 これでは、ここで生み出されて行く数々のアイディアと偉業、そして創造物の生みの親として私の名前が歴史に刻まれてしまうではないか。


 これは良くない。


 歴史はやはり正しく後世に伝えていくべき物であると私は思っている。


 そもそも私はカイザル様の婚約者である前にカイザル様の奴隷なのである。


 にも関わらず奴隷である私がご主人様であるカイザル様の功績を横取りするなどあってはならない。


 そこまで考えている私は何か引っ掛かっている事に気付く。


 そう、私はカイザル様の奴隷なのである。


 そして奴隷は主人の所有物であり道具でもある。

 

 すなわち、ここで私は考えたアイディアも全てご主人様が生み出したアイディアと言っても過言では無いだろう。


 そもそも、どうせ私が考えたアイディアも後からご主人様がさらに良いものへと昇華してくれるのだからもういっそ全てはご主人様が作り出した事にしておこう。


 そして私は胸のつっかえが無くなったおかげで今まで以上に様々な物を見出し始めるのであった。





 轟く轟音に恐鳥の雄叫びが辺り一体に響き渡ると共に、仕留めきれなかったという事が理解できる。


「畜生っ! あれで仕留める事ができないとかどんな化け物だよっ!?」

「だから討伐ランクがAなんでしょうがっ!! そんなわかり切った事を喋る時間があるなら次どんな作戦で立ち回るか考えなさいよこのバカっ!!」

「まさにその悪口を言う暇があれば自分で考えたら良かったじゃねーかよっ!!」

「来るぞっ!! お前らいちゃついてないで戦闘に集中しろっ!!」


 大型で凶暴で有名かつ討伐ランクもAと高ランクの鳥型魔物が眠っている所に岩山の麓で偶然出くわしたのでこれ幸いと寝込みを襲ってみたのが運の尽き。


 この魔物は魔力耐性が強く、従って魔術も効き難いという事がすっぽりと頭から抜けてしまっていたようである。

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