第177話とんだ脳筋娘だ

「いや、だから『水魔術段位二:解術』は、『魔術によって打ち消されない』などの追加効果がない魔術じゃない限りは段位に関係なく打ち消すんだよ。 それが例え段位十の魔術であろうが何であろうが打ち消す事ができる」

『だからそんな魔術があるはずないと言っているのよっ!! そもそもそんな魔術があったとしても段位二なのはどう考えてもおかしいでしょうっ!!』


 俺が今一度、今度はより分かりやすく説明するのだが余計にファルールを怒らせるだけになってしまった。


 しかしながらファルールの気持ちはぶっちゃけ物凄い分かるし、そういう感覚の人間が多いからこそ第八世代以降の大会は使用禁止にされたのだろう。


 むしろよく八世代まで規制が掛からなかった事が意外なほどである。


 ナーフされても何ら疑問に思わないレベルでぶっ壊れているんだよなぁ……。


「うん、めっちゃファルールの気持ちが分かる。 俺もおかしいって思うからな。 流石に段位二で何でも消せるってのはおかしいよな」

『あ、当たり前よっ! だからおかしいって言ってんのよっ!! そもそもそんな馬鹿げた魔術が程段位で──』

「段位三の『削除』くらいが丁度良いよな」

『──使えるわけがな……い…………は? 段位三の『削除』……?』

「そう。 『削除』 効果は段位二の『解術』と同じで魔術を何でも一つ打ち消す事ができる。 なかなか便利な魔術ではあるのだが、たった段位一つされど段位一つ。 段位が一つ上がるだけでこうも使い勝手が変わるのかというくらい悪くなり、確かに環境は変わったからな……」

『ぐぬぬぬぬぬっ!! た、たかがイカサマでいい気になんないでよっ!! 魔術がダメなら物理で攻めれば良いだけよっ!! 死ねっ! 死ね死ね死ね死ねっ!』


 そして未だにイカサマか何かだと勘違いしているファルールは、結局そのイカサマが何なのか見破れないと悟ると(そもそもイカサマなどしていないので当たり前なのだが)今度は物理で攻撃してくるではないか。


 とんだ脳筋娘だ。


 そう思いながら俺はファルールの引っ掻き攻撃や尻尾を鞭のようにして放つ攻撃の数々を避け続ける。


 ぶっちゃけて言うとゲーム時代に戦った相手と比べて半分以下のスピードなので目を瞑ってても避けれそうな程には遅すぎる。


『避けるなっ!! 卑怯でしょっ!! 男ならば正々堂々と戦いなさいよーーーーぉっ!!』


 それはもはやサンドバッグと何が違うというのか説明してほしい。


「いや、流石に服とか破れるから避けるだろう、普通」

『うるさいうるさいうるさいっ!!』

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