第172話 大人の役目
「今更カイザル様の力に気付いても遅いと思うのだけれども、自らの力に溺れてしまい周りが見えなくなった者はこうも醜いものだとはね。 だというのにあの赤いトカゲの態度は未だに無礼なのだけれども、どうしてやろうかしら?」
『申し訳ございません。 返す言葉もございません。 どうか、どうか私の娘だけは、見逃してくださいましっ!」
そして、さらにカレンドールがルールールーに追い討ちをかけるのだが、なんだろうか。 『お前が言うなよ』と突っ込んでも良いのだろうか? ツッコミ待ちじゃ無いよな? とは思うもののカレンドールの声音と表情がガチなので突っ込めない俺がいるわけで。
「まあまあ、わざとじゃなんだから良いじゃないか。 そういう事もあるさ」
「「ご主人様は甘すぎますっ!!」」
「後で頭を撫でてあげるからさ……」
「その寛大なお心、器の大きさ、さすがご主人様ですっ!!」
「強さだけではなく、優しさまで備えているとは、まさに完璧なご主人様としか言いようがありませんねっ!!」
なんだろうか、ここ最近コイツらの扱い方が分かり始めたのだが、あまり嬉しくないのはなぜだろうか。
『母様もお父様も情けないからやめてよっ!! ドラゴンとしての威厳はどうしたのよっ!? これじゃぁ村に帰った時みんなに顔向けできないじゃないのよっ!! こんな小さき者相手に頭を下げる必要などないわっ!!』
そして、両親が屈服しているほどの相手であるという事が理解できないのか、ドラゴン夫婦の娘である赤い鱗を持つファルールが納得いかないと未だにキャンキャン吠えており、それを父親であるファフニールが諌めようとする姿が見えたので俺が手で静止させる。
『お願いしますご主人様っ!! この子はまだ子供故幼い部分がありまして、今回は見逃していただけないでしょうかっ!? もしご主人様の気がすまないというのであれば我の首を差し上げますのでっ!!』
この俺の指示を勘違いしたのかファフニールが首を差し出すのでその怒りの矛を娘に向けないでくれと懇願してくるではないか。
俺ってそんなに信頼がないのだろうか? とは思うものの、そもそもファフニールとはあまり付き合いが無いので当たり前といえば当たり前かもしれない。
「大丈夫だから、ファフニールが心配するようなことは絶対にしないから安心してくれ。 でも、少しばかりお灸を吸えるのは許して欲しい。 初対面の相手に敬意も払う素振りも見せずにここまで言うのは流石に酷すぎると思うから、ダメな事はダメだと注意してあげるのが大人の役目でもあると思うしな」
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