第162話きっと気のせい

「はぁ、面倒くさい……」

「消しましょうか? クロード殿下という糞虫くらいなら息をする労力よりも少ない運動消費量で消せますが?」

「今ならば目撃者も少ないですし、何よりドラゴンに全て擦りつける事ができるのだけれども?」


 一体、どうすればこんなに物騒な感じにこの二人は育ってしまったのか。


 そもそも、二人共何だかんだで正義の為に動くような人物だったはずで、だからこそカイザルの事が嫌いだったはずである。


 俺の奴隷になったこの短い期間でこの二人に何があったというのだろうか。


 もしかしたらクロード殿下の言う通り、俺は無意識のうちに何らかの方法でブリジットとカレンドールに洗脳していたのかもしれない。


 いや、この二人だけではない。


 奴隷達の異常なほどの忠誠心から見てもその可能性が濃厚のような気がしてきたので、俺は課金アイテムである、洗脳状態は勿論そのた全ての状態異常おなす事ができるアイテム『エリクサー』をアイテムボックスから取り出すとキュポンという小気味良い音とを鳴らしながら封を開け、問答無用で緑色した、飲んだ後『不味いっ! もう一杯っ!!』と言いたくなるような液体状のエリクサーが入った小瓶の口ごと二人の口の中へとぶち込む。


「うむっ!?」

「あむっ!?」

「とりあえず全部飲んでくれないか?」


 そして二人は文句を言うでもなく言われた通り小瓶に入ったエリクサーを飲み干す。


「な、何なんですかこれっ!? 身体がすごく軽くなった気がしますっ!!」

「こ、これはっ!? い、一体何を飲ませたのですか、カイザル様っ!?」


 これで何かしら洗脳されているのならば本来の彼女達に戻るはずである。


「エリクサーと言われている物だが? それよりもクロード殿下の事はどう思う?」

「さ、さすがご主人様ですっ!! エ、エリクサー(世界樹の若葉をすり潰した飲み物)をまるで安い回復薬のように扱うなんてっ!! あ、クロード殿下は許可さえあればいつでも消し去りますので」

「ま、まさか……エリクサー(世界樹の若葉をすり潰した飲み物)を飲める日が来るなんて……これで私も不老不死にっ!! え? クロード殿下? 息の根を止めろと言ってくださればいつでも」


 なんか、不老不死とかいう変な言葉が聞こえて来たり、エリクサーの後に隠れた言葉が別にあるような気がするのだがきっと気のせいだろう。


 所詮は課金ガチャのハズレ枠で保有数の上限一杯まで有り余っていたアイテムの一つなので、流石にこれを飲めば不老不死になるなどあり得ない。


 そんな事よりも俺への忠誠心が本物であると言う事が分かった事の方が俺にとっては一大事である。


「そ、それじゃぁクロード殿下を今度は前回と違ってサクッと倒しに行こうか……」


 はっきり言って忠誠心が本物であると分かったという事は、彼女達に愛想を尽かされた場合、忠誠心が強ければ強いほどその反動は大きくなり、俺へと跳ね返ってくるはずである。 


 そして彼女達が心底嫌っている事も分かったクロード殿下に負ける事は、彼女達の忠誠心は間違いなく下がるわけで……。


 

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